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□衛宮切嗣に転生した話(小説)
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19**年*月**日生まれ。私は**歳の普通の人間だった。

平凡な日常をただ惰性に生き、そしてそんな毎日に喜びを感じて生きていた普通の人間だった。

…だったのだ。

気付けば私は片田舎で魔術の研究をする父を持つ10歳程の少女になっていた。

初めは驚き戸惑った。今の私が父と呼ぶべき人に“ここはどこ?”“貴方は誰?”と詰め寄った。

父は初め私の異常に驚き心配したがやがて子供の戯言だと思ったのかすぐに相手にしなくなった。そんな父の態度が孤独になった私には冷たく感じた。暖かな愛情を受けて育った私のはこの父という男が冷めているように映ったのだ。

そんな父だったが私の質問に淡々とではあるが受け答えしてくれた。

父から得られた情報をもとに私は一つの仮定にたどり着く。

ここはFate/zeroの世界、私は衛宮切嗣に転生したのではないかと。

恐ろしく厨二病的な考え方だ。転生?異世界?そんなもの存在するはずがない。

だけど今の私にはそう思う以外現状を説明する筋がなかった。

いきなり変わった環境、魔術を研究するという父、そして子供の容姿に戻ってしまった自身の姿。それらを理由づけるために私は自分が衛宮切嗣の成り代わり主だと思い込むことにした。

そうすると想像できることがある。

未来だ。私はこの物語の原作を知ってる。

遠い未来で聖杯戦争が起こることを私は知ってる。

それは私に希望を与えた。

どんな願い事でも叶えてくれる魔法の聖杯

私は元の世界に帰りたい。
ひょっとしたら聖杯は私の願いを叶えてくれるかもしれない。

私は聖杯に焦がれた。

それから私はなるべく原作の通り行動した。

私とよく遊んでくれたシャーレイを見殺しにして村が炎に包まれるのを漠然と見てナタリアさんに助けられそして父親を殺した。

いや、殺したのではない。だってこの世界は二次元、ただの紙面上の世界なのだ。だから私が撃ったのは人ではない。ただ私は紙を破り捨てたのだ。あの男から赤くあふれるものも血ではなくきっとインクだ。

そう、すべてただのペラペラの紙だ。
紙を破くことに何の躊躇いがあるだろう。

ナタリアさんも見殺しにした。
私は彼女を救うことができたのに、だ。

単純な話だ。飛行機に乗せなければいい。オッド・ボルザークが体内に蜂を飼っているのを伝えればいい。

私はそうしなかった。原作を壊さないために
原作を変えて私が聖杯戦争に参加するという未来を変えないために

ランチャーを構えながら綺麗事を吐く。


「私達は家族だ。貴女を母親のように思っていた」

それは何の感情も込められていないただの言葉だった。


それから暫くしてアインツベルクのホムンクルスとの結婚が決まった。

少々驚かされたのはアイリが男だったことだ。

女の私に女をあてがうわけにもいかない。

流石ホムンクルス。性転換もお手の物か。


「よろしくね、ナマエ」


そう言って微笑むアイリ。ああ、それでも彼は私の知る“彼女”だ。

彼の手綱を握るのはさほど難しくはないだろう
私は口元を釣り上げ笑みを作った。


だがここで私は絶望を知る。

アイリとは形だけの夫婦だが義務は果たさなければならない。

そう思い事に及んだ。

だがそれが間違いだった。

子供が出来た時私は呆然とした。

男と女がまぐわったのだ。それは当然のこと。

だが私にとっては当然ではない。

紙と人が交わって命が生まれたのだ。
これをどう捉えればいい?

私は人で三次元の世界の人間でここは二次元で紙面上の世界。その二つは交わらない。なのに命が生まれた。

ということは私はこの世界の住人ということなのだ。

だが私はそれを受け入れられなかった。

私が今まで平然と人を殺すことができたのはここが平面上の世界だと知っていたからだ。

私にとってそれはゲームセンターでおもちゃの銃を構えゾンビを撃つ行為と何らかわりがなかった。

だというのに私がこの世界の人間だとしたら私のした行為はただの、


人殺しだ


私はそれに耐えられない。
だから私は子供を避けた。でないと心が耐えられなかった。
避けて避けて無いものとして扱った。

イリアは恐怖の対象だった。

もうすぐ聖杯戦争が始まる。

私の勝ちは揺るがない。
私はこれから起こる未来を知ってるのだから。

だがらはやくはやく、

私の心が壊れる前に

はやく元の世界に戻って悪い夢を見ていたと安心させて

はやくはやく


終焉はもうまもなく


〜end〜

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