ブック(ネタ)
□暗殺教室の渚君が白ひげ海賊団にやってくるお話(小説)
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ある日船にガキが落ちてきた。
敵襲かと船内は慌ただしくざわめいたがガキのあまりにも貧弱な容姿に皆毒気を抜かれた。
ガキの名前は渚というらしい。どうやってこの船にやって来たのかと聞けばわからないと答えた。気付いたらこの船にいたらしい。
どこから来たと問えば日本という国から来たらしい。船員に聞いて回ったがその国のことは誰も知らなかった。
ガキが適当な国をでっちりあげてホラを吹いたのかと思ったが日本という国を知らないという俺達の言葉にあまりにも絶望的な表情を浮かべたのでその線もなさそうだ。
この渚というガキは誰も知らない日本という国からいつの間にかこの船にやってきたらしい。
怪しさ満点だが身体検査をした時なんの武器も出てこなかったことと筋肉のつき方から戦闘向きの身体ではないことから次の港までの乗船を認めた。
初めは得体の知れないガキを皆怪しみ警戒していたが率先して掃除や雑用を行う姿勢や体力もないくせに船員と同じ訓練メニューをしようという真面目な態度に渚は自然と白ひげ海賊団に馴染んできた。
もともと白ひげ海賊団はフレンドリーで面倒見のいい船員ばかりなのだ。真面目で一生懸命でいつもニコニコしている渚が可愛くないはずがない。
最初の港が白ひげ海賊団を嫌っていて渚を降ろせなかったこともあり渚はずるずると船に居座ることとなった。
もう渚は家族の一員というように扱われていた。
エースなんかは一番下の地位を返上できて喜んでいるし他の家族も可愛いげのある渚を歓迎していた。
だが渚は白ひげ海賊団の船に乗せるためにはあまりにも弱かった。
船員と同じだけの訓練をしているのに筋肉はつかなくまたナイフ捌きも銃の腕前も全く上がらなかった。
渚を見る限りよほど平和な国で育ったのだろう。ならば戦闘の腕があがらないのはある意味仕方ないのかもしれない。
しかし白ひげ海賊団は海賊なのだ。当然戦闘だって頻繁に起こる。
今は戦闘の度船内に隠れさせているがいつどんな事故が起こって命を落とすかわからない。
やはり渚はこの船から降ろすのがいいだろう。そう思った時のことだった。
その日は酷い天気だった。視界を遮るような豪雨が降り注ぎただでさえ足場が悪い中敵船が戦いを挑んできた。
その日俺の状態は最悪だった。炎の鳥だけあって水には弱い。
力を半減しか出せない状態で戦いを強いられあげく悪い視界の中狙撃主に気付かず攻撃された。
狙撃主は直ぐに仲間が倒したが打ち込まれた弾が海桜石で出来ていたため俺は能力を使えずさらに力の抜ける身体で戦いを強いられた。
敵も元々そういう作戦を練っていたのだろう。
次々に襲い掛かってくる敵をいなしていたが明らかに雑魚でない男が目の前に立ち塞がった。
「不死鳥マルコ!覚悟しろ!」
吹き荒れる豪雨の中白刃が煌めいた。
殺られると覚悟したその瞬間だった。
刃は俺に届く前に止まり男は突然倒れた。呆然として見ていると周りにいた男達も次々と倒れていった。
何が起こったのかわからない。
しゃがみこみ倒れた男を見ると頸動脈を何か鋭利な刃物のようなもので裂かれていた。誰がこんなことを
「大丈夫ですか?マルコさん」
かけられた声に弾かれたように顔をあげる。その声の主がここにいるはずはなかった。なのに顔をあげるとそこには渚がいた。
「たぶん、この近くにいた人達は全部やっつけたと思うんですけど早く行きましょう。傷の手当てをしないと」
そう言って手を差し出してくる渚はマルコが知ってるいつもの渚そのものだ。
きょとんとした大きな目に雨に濡れて透けて見れる貧弱な身体つきはまさに彼そのものた。
右手に血濡れのナイフを持っていなければ
「これは、お前がやったのかよい?」
「え?あ、はい。僕がやりました。マルコさんが危ないと思ったので夢中でつい。でも初めての割に上手に出来ました。良かったです」
そういって照れたように頬をかく渚はテストで良い成績をとったかのような表情だ。あまりに異常な状況にマルコは言葉を失う。
初めて人を殺したというのにこんなにも冷静でいられるものなのか。いや、むしろ初めて人を殺すことをこんなにも冷静に出来るのだろうか。
死体には躊躇い傷はない。渚はあっさり冷徹に人体の急所を切り裂いたのだ。初めての人間ができるはずがない。有り得ない。
だけどもし本当に初めて人を殺したというならば彼は生まれながらの殺し屋だ。
『立てますか?』という渚の肩を借りマルコは立ち上がる。動揺が収まらなかった。
冷静で的確な判断、万全ではないとはいえマルコに気づかれることのない気配の消し方。
マルコは戦慄する。
もし渚が敵に送り込まれた刺客だったら今頃白ひげ海賊団は終わっていただろう。
彼は本物の暗殺者だ
〜end〜