丸くなった背中。
覇気のない顔。
―――あと30分。反応なしのままだったら保健室を出よう。そう心に決めた矢先に。
ぽつり。
痛い沈黙が、破れた。


「―――聞かない、の?」


普段からは考えられない弱々しい声。
腹が立つ。お前は馬鹿みたいに笑ってたらいいんだよ。
似合わない。そんな顔。そんな声。
腹が立つ。
―――腹が立つことにも腹が立つ。
(聞けって。今更だろ)
お前が笑うのも。驚くのも。喜ぶのも。
頬を染めるのも。
全部。オレじゃない、相手。
―――ああ、反吐が出そうだ。
わかってんの。お前さ。
オレは。


「―――聞いて欲しいの?」
「・・・元気ないねーとか。静かだねーとか」
「くだらない質問はしない主義なんだよね」
「意地悪」
「そう?」
「こんな時にまで、意地悪」
「こんな時ってどんな時」
「・・・泣きたい」
「泣けば?」
「泣かない」
「そう」
「―――ねえ」
「何だよ」


うざったい女だけど。あたし。それでも。
それでも?
―――それでも。ここにいてくれるんだよね。薫は。
やっと振り返った不細工な女は。
(あー・・・)








それは、お前が
(気になる。から)




2011*06*02




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