NOVEL<<OO

□お見合いからはじめよう。
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会社からの帰り道。アレルヤは気が重くて仕方がなかった。またあのパツキン上司から無茶苦茶な依頼をされたからだ。しかも仕事とは全く無関係な。


「……ホントに、世界の悪意が見えるようだよ…」


正確には『世界の』ではなく、『上司の』だが。まぁ、彼の上司ことグラハム・エーカーには悪意はなかったのだけれども。
むしろ彼からは悪意というものが全く感じられない。どちらかと言えば善意の塊のような男だ。果てしなくKYでいけない性癖の持ち主ということを除いておけば、だが。

しかし仕事は人一倍出来き、何かとミスの多いアレルヤのフォローを毎回してくれているのだから、気の弱い彼は文句を言えるわけがなかった。


「刹那に…頼んでみるか…」


アレルヤは自分と刹那の住むアパートにたどり着くと、自分の部屋に帰る前に刹那の部屋を訪ねた。アレルヤと刹那はお隣さん同士である。刹那が大学入学のために上京してきてからの付き合いなのでもうかれこれ2年半くらいになる。


チャイムを押して15秒ほど待つと、刹那が顔をドアから覗かせた。彼は眼鏡をかけていた。きっと勉強でもしていたのだろう。
アレルヤは「やぁ、刹那」と少し元気なく声をかけた。アレルヤを見ると数回瞬きをして眼鏡を外す刹那。


「……なんだ、アレルヤか。どうした?」

「ちょっと君に頼みがあってね」


アレルヤが気まずそうにえへへ、と笑うと刹那は首をかしげた。


「頼み……?」

「うん、ちょっと中で話しても大丈夫かな?」

「……あぁ、構わない。入れ」


刹那はドアを大きく開き、アレルヤを中に招き入れた。
刹那の部屋は整然としていて余計なものが置かれていない。狭い1DKにあるのは折りたたみ式ベットに、机、小ぶりの箪笥、本棚くらいだ。本棚には航空学系の参考書と推理小説とガンダム関係の書籍がちゃんとジャンル分けされて並んでいた。

アレルヤがガンダムの本がまた1冊増えてるなぁ、と内心思っていると刹那がお茶を持って来た。アレルヤの向かいに腰を下ろす。


「で、話とはなんだ?」

「あー、そうだったね……。刹那、合コンに参加してくれないかい?」

「合コン……だと?」


刹那が思いっきり顔をしかめた。想定の範囲内だとアレルヤは思った。

嘘をつくのは忍びないけれど、刹那を誘い出すにはこうするしかない。でないと、あとで上司に何と言えばいいのか……。


気が進まないけれどここで頑張っておかないと自分の未来はない。再来年までに恋人のマリーと結婚しようと約束しているのに、上司に嫌われ昇進の道を閉ざされるわけにはいかないのだ。悲しいかな、これがサラリーマンといものである。


「お願いだよ、刹那!行ってくれるだけでいいんだ。ただの人数合わせだからさ、ねっ?」

「ただの人数合わせなら行く必要もないだろう。時間の無駄だ。…というか何故俺に頼む?明らかに人選ミスだろう」

「うぐっ……!」
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