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□とあるロク刹の休暇の過ごし方
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長いトレミーでの宇宙生活を強いられていたロックオンと刹那は、久々に地上で束の間の休暇をとっていた。
2人はアイルランドの人里離れた奥地にあるロックオンの隠れ家にいた。
キッチンからはトントンと規則正しい音が響いている。
「ロックオン、いい加減にしろ」
刹那は包丁でジャガイモを切る手を止めないまま、背中にベッタリと張り付くロックオンに言った。
「いいだろぉ〜刹那がかまってくれなくて俺は寂しいんだ…」
そう言うだけでロックオンは張り付くのをやめないどころか、さらに体を密着させてきた。
ロックオンの熱い吐息が刹那の耳元に直に当たる。
――やめろ、変な気分になる。
刹那は思いながら切ったジャガイモをロックオンに拘束されながらも器用に鍋に放り込んだ。
……というか日の高いうちから何を発情しているのだ、この男は。昨日俺がロックオンが風呂に入っている間に寝てしまったせいか?
だが、誰でもそうだろうが集中しているときに邪魔をされるのは非常に神経に触るものだ。
特に刹那はそうだった。相手がロックオンだったからしばらく我慢してやっていたが、もう限界だ。
刹那はロックオンの足を踵で踏みつけ、拘束が緩んだところで渾身の肘鉄をお見舞いしてやった。
刹那の細い肘は見事、ロックオンの鳩尾にヒットする。
「ゴフッ」と言い、倒れるロックオン。だが、効き目が甘かったのか鳩尾を
押さえ、直ぐに上体を起こした。
「何するんだよ刹那ぁ〜!」
ロックオンは半べそをかいて刹那を見上げた。刹那はロックオンを見ようともしない。ニンジンを手にとり切り始める。
「何をするんだ、と言いたいのはこっちだ」
刹那は低い声で言った。ロックオンはしまった、と思う。刹那の声が1オクターブ低くなるのは怒っている証拠だ。
条件反射でロックオンは咄嗟に隠れる場所を目で探してしまう。それを制するように刹那が一言。
「料理の邪魔はするな、とあれほど言っただろう」
淡々と作業を続けながら言われると逆に怖い。ロックオンは黙っているよりはいいだろうと思い、「悪い…」と控えめに言ってみる。
だが、それは逆効果でしかない。刹那はキッと眉毛を吊り上げた。
「悪いだと?解っているなら最初からするな!……それとも…」
刹那は包丁を持ったままくるり、と振り返った。ロックオンは思わずヒッと短い悲鳴をあげる。
「お前も料理されたいのか?ロックオン・ストラトス」
刹那の顔は笑っていた。凍りつくロックオン。
刹那は包丁を振り上げた。
「そうか、解った」
「え、何を解ったんだ刹那!?え?ちょっ!待て待ってください刹那様ぁぁぁあ
ぁ!!!!」
「刹那・F・セイエイ、狙い撃つ!!」
ドスッ
刹那の手から放たれた包丁がロックオンの耳元をヒュンと音を立ててすり抜け、
壁に突き刺さった。茶色の髪がパラパラと数本床に落ちる。
茶髪男は瞬き一つすらしない。よほどショックが大きかったらしい。
放心状態のロックオンに刹那は艶のある笑みを向ける。
「いい子だ、ロックオン」
刹那は上機嫌に壁に突き刺さった包丁を引っこ抜くと再び料理に取り掛かった。