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□アーデさんの憂鬱
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ティエリア・アーデは非常に驚いていた。
まさか自分がCBのメンバーから恋愛について相談される日が来ようとは夢にも思ってなかったからだ。

しかもあの刹那に、だ。
明日空から槍でも降ってくるんじゃないだろうか。
ティエリアは本気でそう思った。



「で、その人を見たら刹那は動悸がするんだな?」

「あぁ…でも解らないんだ。好きだ、とも言われたんだが俺にはいまいち『好き』というのが解らない…。そもそも『好き』とは何なんだ?」

ティエリアの部屋の腰掛けに座り、刹那は深いため息をついた。
ため息をつきたいのはこっちだ、とティエリアは思った。
本当はすぐにでもヴェーダに今回のミッションの報告をしに行きたいというのに。


――が無下に追い返すのも憐れな気がして、真面目に考えてやることにした。

全く、刹那が恋愛関係で悩むなんて一体誰が想像できただろう!


ティエリアは腕組みをして壁にもたれた。

「こういう話を聞いたことがある」

「…なんだ?」

「好きかどうか、とは少し違うかもしれないが……刹那はその相手とキスできるか?付き合えるかどうかはその相手とキスできるかで判断しろ、と誰かが言っていたのを覚えている」

「キス…?挨拶で日常的に行ってる国もあるじゃないか」


刹那はポカンと呆けたような顔をした。ティエリアはガクリと肩を落とす。


「そうじゃなくてだな、口にできるかどうか、つまり恋人同士でするようなやつができるかって僕は聞いているんだ!刹那・F・セイエイ!!」



あぁ…何で僕がこんな恥ずかしいことを口にしなければならないんだ……本当に嫌になる…
ティエリアは紅くなった頬を刹那に見られないようにするため下を向いた。



「恋人…同士……」

刹那は遠くを見るような目をし、しばらくそのままで固まってしまった。
時間だけがのろのろと過ぎていく。


何時になったら僕は解放されるんだ、とティエリアが考え出した頃、刹那が動いた。
何やら頬が紅潮し、目がキラキラしている。


「礼を言う。ティエリア。やっと答えを見つけた。ロックオンのところへ行ってくる」

「……?ちょっと待て刹那!!」


すごく嫌な予感がしてティエリアは、足早に去っていこうとした刹那の腕を掴んだ。


「なんだ?」

「なぜ答えが見つかったらロックオンのところへ行く必要がある?まず例の彼女のところへ行くべきなんじゃないのか?」

「彼女…?」


刹那はこいつは何を言っているんだ、というように眉をひそめた。


「だからお前が悩んでいた相手のことを言っている!」


何故さっき話していたことが通じないのだ、とティエリアは苛立つ。

そこまで言うと刹那は話が見えたらしく、「あぁ」と言った。


「俺がさっきから言っている相手とはロックオン・ストラトスのことだ。ティエリア・アーデ」



――時が止まった。



そうしている間にも刹那はさっさと行ってしまう。


「まっ、待ってくれ、刹那!」

「…今度は何だ」

二度も呼び止められ、さすがの刹那も苛立ってきているようだ。


「お前は……ロックオンと付き合うのか?」


ハッとしたような表情をして俯く刹那。
俯き気味だったため、よく解らなかったが、ティエリアには刹那が微笑んでいるように見えた。


「…あぁ。そのつもりだ」

刹那は今度こそ行ってしまった。
ティエリアはずるずると床に座り込む。


刹那が思い悩んでる相手は当たり前のように女性を想像していたのに、よく聞いてみたら自分のよく知る気のいい長身ガンダムマイスターであった。

それも男の。


――ってことは僕は刹那とロックオンの恋のキューピットって訳か…

……全然嬉しくないのは何故だろう……?


「間違っている……君たちは何か間違っている…」

ティエリアはぶつぶつ言いながら自室へと引き上げ、そのまま寝込んでしまった。




刹那がロックオンと付き合い出したという噂はまもなく広がることになる。














実は一部実話だったりします(笑)ちゃんちゃん♪

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