小説
□抱きしめたい
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「またここにいたの」
25番通りの高台に一人夕日を見つめるオレンジの髪。
「何よ、迎えなんて呼んでないわよ」
今日もまた半泣きのカスミを迎えに行く。
こんな事言っといて、ちっとも抵抗せずに俺との隣りで歩く彼女が愛しい。
…また喧嘩でもしたのかな。
「なぁ……」
おもむろに俺は隣に歩く少女に向き直った。
びっくりした彼女の瞳に、俺の姿が映る。
きっと勘の鋭い君だから、俺が言おうとしてる事なんか分かるはず。
だからそんなに眉をひそめるんだろう?
ーーもう、何回目になるかな。
「…好きだよ」
「……馬鹿、知ってるわよ」
カスミのおろした髪が風に揺れると塩素の匂いがした。
抱きしめたい
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