小説

□エゴイストは身を投げる
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「戦争に行くのが怖くないかって?」

サングラス越しにマチスの困ったような瞳が見えた。
別に私とあなたの間に特別な関係があるわけじゃないけど。
だけど私は昔からあなたを特別に思ってたから。
いなくなる度に、死んでしまうくらい不安で心配で。
ひょっこり帰ってきたと思えば、どこか必ず怪我をしてるものだから、

「別にマチスの心配とかそんなんじゃないから」

素直になれずに、そっぽを向くと苦笑した彼が視界の隅に映った。

夕焼けが部屋を真っ赤に染めていた。
夜へのカウントダウンを壁にかかった時計だけが静かに刻む。
その音以外何もしない。



「もちろん、怖いさ」

いつのまにかサングラスを外した彼がそこに居た。


「怖い、けど。大切な人を守れるならこの命を喜んでさしだしたいのさ」

そう言って私の頭をガシガシと撫でる。

…いつもあなたがサングラス越しに見てる世界はどんな色なのかしら。

私にとっても、あなたは命を投げ出す程の存在なのに。

「…あたしにチョーダイよ」

Please give me.

「…何?」


your heart.


「………サングラス」

やれやれといった感じのマチスがゆっくりと近づく。

ーーサングラスで視界が一瞬暗闇に落ちる。
そして、同時に頬に触れる優しいキス。

(I do not leave you.)



エゴイストは身を投げる


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