私立こだま学園高等部

□第三話
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「遅い」



怒りに満ちた重低音が響く。



「え? すみません! あ、でもこれでもホームルーム終わってから直行で来たんですよ?」



イーグルが鷹ノ目先生の苛立ちに気付いていて敢えてなのかそれとも深刻なまでに空気が読めてないのか、あっけらかんとして答える。



「ダラダラくっちゃべって歩いてるから遅くなるんだ。イーグル、おまえ今日で何回目の遅刻だ」

「え? 生徒指導室に来るのが遅いと言われたのは今日が初めてです!」

「……学校に遅刻した回数だ」



見事なまでに話が噛み合わない。
鷹ノ目先生が投げたボールをイーグルがテニスラケットでスマッシュを返すように会話のキャッチボールが成り立っていない。



「あ、学校のですか!」



他に何があるのか。



「今日で確か100回目ですね!」



キリ番である。
ただし微塵もめでたくはない。



「そうだ。100回目だ。ぶっちぎりでこの学園のトップだ。然るべき処罰を考えなければならないが……死ぬ前に何か遺言はあるか?」



考えるも何も死を以て償うしかないかのような台詞である。



「え!? 死ぬのは困ります! オレ、ばあちゃんの介護しないといけないんですよ! ばあちゃんと二人暮らしなんで!」



イーグルは年老いた祖母と二人暮らしである。
祖母は近所ではちょっと有名な占いおばあちゃんなのだが、ここ数年で目が不自由になってしまったためイーグルが献身的に介護をしている。
彼が毎日遅刻してくるのは朝祖母の介護をしているからであるが、それを決して言い訳にしたりしない。
空気は読めないが見上げたものである。
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