rose knight―(冬月シリーズ)
□華は美しく、夢朧。
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パラパラと薄紅色の花弁が散る。
鮮明に残る記憶の断片…
「冬月…」
「母様ぁ」
「駄目だよ。此処には近づいてはいけないと教えただろう…」
「ごめんなさい…」
黒い制服に金色のボタン…
淡い紫色の髪を一つ結いにした男性。幼い自分は彼を『母様』と呼んでいる。
「怒ってないよ。さぁ…戻ろう」
「うん…」
白い手が、幼い子供の手を握り締めた。子供の瞳に映されていたのは大きな白銀の扉。 百合や白薔薇やアラベスクが施されている迫力ある扉だった。
「母様ぁ…あの扉は何?」
「大きくなったら解るよ…」
「ぶーっ」
「頬を膨らませても可愛いだけだよ?冬月……」
不思議な扉に興味津々だった。
「今は…まだ…早すぎるから…」
「けちぃぃぃっ…」
「父君にも同じ事言えたら…教えてあげる」
薄紅色の花弁が消していく。
“まだ、早すぎ…”
マダ…
覚醒する日ではない、と…
全てを隠していく。