rose knight―(冬月シリーズ)

□華は美しく、夢朧。
4ページ/4ページ

パラパラと薄紅色の花弁が散る。
鮮明に残る記憶の断片…


「冬月…」


「母様ぁ」


「駄目だよ。此処には近づいてはいけないと教えただろう…」


「ごめんなさい…」


黒い制服に金色のボタン…
淡い紫色の髪を一つ結いにした男性。幼い自分は彼を『母様』と呼んでいる。


「怒ってないよ。さぁ…戻ろう」


「うん…」


白い手が、幼い子供の手を握り締めた。子供の瞳に映されていたのは大きな白銀の扉。 百合や白薔薇やアラベスクが施されている迫力ある扉だった。


「母様ぁ…あの扉は何?」


「大きくなったら解るよ…」


「ぶーっ」


「頬を膨らませても可愛いだけだよ?冬月……」


不思議な扉に興味津々だった。



「今は…まだ…早すぎるから…」


「けちぃぃぃっ…」


「父君にも同じ事言えたら…教えてあげる」

薄紅色の花弁が消していく。


“まだ、早すぎ…”



マダ…





覚醒する日ではない、と…


全てを隠していく。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ