rose knight―(冬月シリーズ)
□華は美しく、夢朧。
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黒いバロック状の観音扉が一つ。
辺りは真っ暗な闇が広がる。幼い俺は立たされていた。
「許しはしないぞ!」
「アンタに何が解る。親でもないくせに」
扉の中から争いの声が聞こえた。
「紫月、冬月を渡せっ」
「誰がアンタなんかに…」
「あの子は神の血が濃く混じっている。何れは、天神界が誇る…「ふざけるなっ」
誰かが怒鳴る。
その怒りは誰(た)の為だろう…
扉の奥で何が起きているのだろうか。
「冬月…さぁ…行きましょう」
真っ暗な闇の中、俺は母様に手を引かれた。何事もなかったかの様に観音扉から離されていった。
なぜ、遠い始祖が俺の名を知っているのだろう。
「兄様…必ず…この子を護って見せます」
僅かな小さな声が母様の口から漏れた。
悲しみが籠っていて、震えていた声…