rose knight―(冬月シリーズ)
□炎の狂舞と松の華舞
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――天神界・皇華帝・松の楼閣
「くくくっ、んー…いい表情だ」
喉を鳴らしながら琥炎は笑う。
「は、離して下さい。琥炎様」
「昔は…“兄さん”って呼んで慕ってくれていたのに、ね。何時から世間体を気にする様になったんだい?朱巍」
「…っ」
あどけなく見せる表情が何時になく恐い。何百年と豹変すらしなかった兄が、突拍子もなく、急に豹変するなんて朱巍は予想してかった。
「紫御はドコ?」
「存じ上げません…」
「…何の為の白薔薇騎士なの。居なくなったら、捜すのが仕事だろう」
「直ちに捜索します…っ」
ギュッと、力強く肩を握られる。
「それでいいんだよ。反抗したら、君の地位をズタズタにする所だった。従順な僕で安心した…よ」
朱巍の頬を金色の毛先が掠める。まるで、別人に思える程の激変に違和感を覚えながらも彼は口に出来なかった。
肖像画に描かれている母親の瞳が寂しそうに見えたから。