rose knight―(冬月シリーズ)
□琥珀月夜の金と銀の瞳
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――魔界・ブェルブニ邸・紫月の寝室
ベージュのシーツに身を預けているのは、死んだ様に眠る弟。
目を開かぬ彼の傍まで近寄り、紫御は頭を撫で上げた。皇華帝での出来事が全て甦ってくる。
「紫月…」
口を開いてくれる訳でもないのに…名前を呼んだ。
あの頃の様に『姉さん』と、呼んでくれる事はないのだろうか。ふっとした思いが無償に寂しさを感じた。
「早く…早く…目を醒まして」
悲しい声音が部屋に響き渡る。
自然に、紫御の異なる瞳から一滴の涙がぽつりと眠る紫月の手の甲へ落ちる。
緩んだ涙腺は次々と雫を落としていく…
その度に紫月の手の甲や頬に、ぽたっぽたっと…音を立てる。
「―――…さん」
「…」
泣いていた彼女は、顔を上げた。