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□風邪にチュー意!
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今日は宍戸さんが珍しく風邪をひいて学校を休んでいる。
多分その原因は…日吉のせいだろう。
数日前から風邪気味だった日吉は『大したことない』と言ってずっと部活に参加していたのである。
そして当の本人の風邪が完治した頃、今度は宍戸さんが風邪をひいてしまったのだ。
絶対、日吉の菌が部室内でウヨウヨしてたに違いない。
確率からいえば同じ学年のオレの方が日吉と接触する機会も多い筈なのに、何で宍戸さんに感染してしまったのか…。
――あいつのせいで宍戸さんが!
日吉に文句を言ってやったけれど『オレには関係ない』の一言で片付けられてしまった…。
今日は1日中、宍戸さんのことが気掛かりで授業も上の空だった――。
ラッキーな事に今日は部活が休みの日。
放課後、オレは真っ先に宍戸さんの家へ向かったのである。
*
「宍戸さんっ!」
オレはベッドで寝ている宍戸さんのもとへと駆け寄った。
見ると熱があるのか頬がほんのり赤く染まっていて瞳が潤んでいる。
「…っ」
病人を目の前に不謹慎と思いながらもオレは心の中で『可愛い…』と呟いてしまっていた。
「長太郎っ。わざわざ来なくてもいいって言っただろ…おまえにまで風邪うつっちまったらどーすんだよ」
「オレは大丈夫ですよ。それより具合はどうですか?」
「…ん、ちょっと熱あるけどこんなのすぐ治っちまうから心配すんな」
そう言いながら宍戸さんはゆっくりと上体を起こした。
――ドキッ
初めて見るパジャマ姿。
暑かったのか、その胸元のボタンが幾つか外されていて大きくはだけていた。
オレは目のやり場に困り、視線をさ迷わせながら一瞬頭をよぎった変な考えを打ち消す。
まったくこの人は…無防備すぎる…。
「長太郎…?」
オレの顔を不思議そうに見ている宍戸さんは瞳が潤んでるせいか、やけに色っぽくて今すぐにでも抱きしめたい衝動に駆られた。
「し、宍戸さんっ、無理しないで寝ててください!」
「大袈裟なヤツだな。大丈夫だっつーの」
「ダ、ダメですっ」
オレは少し強引に宍戸さんを寝かせると胸元がはだけたパジャマの乱れをさりげなく整えた…。
「…ったく、しょーがねぇな」
宍戸さんはやれやれといった様子で、大人しくオレの言うことを聞いてくれた。
「オレ、今日宍戸さんがいなくて…とても寂しかったです」
「長太郎…」
宍戸さんは少し申し訳なさそうな顔をしてオレを見つめている。
オレは優しく微笑みながら宍戸さんの柔らかい髪をそっと撫でた。
すると安心したのか穏やかな表情を見せてくれる。
そんな宍戸さんが愛しくて堪らない。
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