Main
□慰め。
1ページ/2ページ
部活を引退してから長太郎と会える時間が大幅に減り、1人で過ごす時間が増えた。
「つまんねぇ」
学校から帰宅した俺は着替えもせずに制服のまま自室のベッドに寝転がる。
いつも当たり前のように隣にいた長太郎がいない―。
天井をぼんやり眺め、俺は溜め息を吐いた。
1人になると長太郎の事ばかり考えてしまう。
胸にぽっかりと穴があいてしまったような喪失感。
嫌でも長太郎がいない寂しさを思い知らされる。
…とは言うものの、学校では毎日一緒に昼飯を食べているし、長太郎が部活のない時は必ずと言っていいほど会ってはいるのだけれど。
それでもまだこの生活には慣れなくて、つい今までの癖で隣にいるはずもない長太郎の姿を探してしまう自分がいた。
思っていたよりも俺の中で長太郎の存在がとても大きなものになっていた事に今更ながら気付く。
多分、今、長太郎が俺を想う気持ちよりも俺が長太郎を想う気持ちの方が強いのではないかと、思う。
こんな事言ったら長太郎はきっと、『俺の方が宍戸さんの事、いっぱい想ってます!!』
なんて、ムキになって言うのだろうけれど…。
それにしても、長太郎と一緒の時間が減っただけでこんなにもモヤモヤした気分になるなんて自分でも信じられなかった。
この先、中等部を卒業して高等部へ上がったら今以上に長太郎とは会えなくなる…。
その時俺はどうしているのだろう。長太郎との関係は今と変わらずにいられるのだろうか?
少し考えただけで、どうしようもなく不安になった俺は無理やり思考を停止した…。
ベッドの上でゴロンと寝返りをうって、そういえばまだ制服姿だった事に気付く。
「あ、早く着替えねーと…」
俺がいつも制服姿でゴロゴロしてたり、脱ぎっぱなしにしてたりすると、よく長太郎にそれを指摘されていた。
『制服、皺くちゃになっちゃいますよ、宍戸さん!』
まるで母親の様に俺を叱ってきた長太郎がやけに可笑しくて。
ふと、その光景を思い出し俺は思わず笑みを溢す…。
「………長太郎…」
さみしい。
心も、身体も―。
長太郎の温もりが欲しい。
俺を癒して、欲しい。
身体が長太郎を欲して疼く…。
「っ…」
寂しさを紛らわせたくて俺は疼き出した自分自身に手を伸ばした。
直に触れるとそれは熱を帯び始め、先走りで俺の手を汚す。
「…んっ…」
目を閉じていつも長太郎にされるように自分自身を弄れば、そこはクチュクチュと厭らしい水音をたてた。
この部屋には他に誰もいないのに、何故か長太郎に見られているような気がして俺の羞恥を煽る…。
「…ちょう…たろっ……ぁっ…」
物足りなさを感じながらも、俺は呆気なく欲望を自分の手のひらに吐き出した。
指の隙間から、どろりとベッドのシーツに白濁が零れ落ちる。
「…はぁ…何やってんだろ、俺」
一気に脱力するとともに、俺は再びベッドに突っ伏した。
「…………激ダサ…」
end.
あとがき→