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□Calling。
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真夜中、静まり返った部屋に携帯の着信音が鳴り響いた。

既に眠りについていた俺は眠い目を擦りながら携帯に手を伸ばす。

「…ん…」

奏でるメロディーで、誰からの電話かすぐに分かった俺は一気に目が覚め飛び起きた。

「もしもし?宍戸さんっ?」

『…長太郎』

その声はいつもの宍戸さんのものとは違っていて、どことなく弱々しい。

「どうしたんですかっ?こんな時間に…」

『…なんか急におまえの声が聞きたくなって…わりぃ…寝てたよな…』

「気にしないでください、俺は全然大丈夫ですよ。それより宍戸さん、何かあったんですか…?」

普段は俺の方から電話やメールをすることが多く、宍戸さんから連絡をもらうことはあまりない。
ましてやこんな夜中になんて…。

『…さっき…イヤな夢…見た…』

「え、…夢ですか?…いったいどんな…」

『…長太郎が…別れようって…』

宍戸さんの声が微かに震えているように聞こえた。

「ええっ…俺がそんなことを?…す、すみません…宍戸さん…」

『…なんでおまえが謝るんだよ…』

「あ…、なんとなく…」

夢とはいえ、俺はなんて酷いことを…。
そもそもそんな夢を宍戸さんに見せてしまった原因が、自分にあるのではないかと考えてしまう。
知らぬ間に宍戸さんを不安にさせてしまっていたのだろうか…。

『…もし…正夢…だったら…』

「絶対ありえませんっ!」

『……』

「宍戸さん?」

『…でも…いつかは…俺達…』

その先、宍戸さんの言おうとしている言葉が予想できた俺は胸がズキリと痛くなる…。

「宍戸さん、それ以上何も言わないでください。変なこと言ったら…俺、怒りますよっ」

『……』

「いつも言ってますけど、俺には宍戸さんだけです。これから先も、ずっと…」

俺は宍戸さんさえ居てくれれば…他に望むものは何もない。

『…長太郎…』

「だから…安心してください」

『……サンキュ…』


*

電話を終え、俺は再び眠りにつく。

今度は宍戸さんが良い夢見られますように――と願いながら…。




end.

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