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□小さな幸せ。
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「じゃあ、帰りましょう。宍戸さん」
「おう」
日もすっかり傾き辺りは薄暗くなっていた。
いつもと何も変わらない部活帰り。俺と長太郎は他愛のない話をしながら歩いていた。
「宍戸さん」
「ん?」
急に立ち止まった長太郎につられ俺も足を止める。
「どうした?」
「あの…お願いがあるんですけど…」
「な、なんだよ?」
改まった感じで視線を泳がせている長太郎を見て、何事かと思う。
「…手、繋いでもいいですか?」
「は?」
「だ、だから…そのっ…手を…」
「ぶっっ!!」
あまりにも予想外のセリフに俺は思わず吹き出した。
「ああー!!酷いです、宍戸さんっ…そんな笑わなくても…」
真っ赤な顔で恥ずかしそうに怒っている長太郎。
「あ、わりぃわりぃ…」
「俺…凄い勇気出して言ったのにっ」
長太郎は半泣き状態になっていて、さすがの俺も笑い過ぎたと反省する。
「おまえ…、んなこといちいち聞くなよっ///」
「だって宍戸さん、怒りそうだから」
「……」
まあ、確かに長太郎の言い分も当たっているか…。
いきなり手なんか握られたら、一発くらい殴っていたかもしれない。多少なりとも納得する。
「ダメ…ですか?」
まだ涙目の長太郎が俺を見つめている。
「ダメなわけ…ねぇだろっ///」
自分でも分かるくらい、一気に顔に熱が集中する。
「えへへ」
長太郎は嬉しそうに自分の手を差し出してきた。
「///」
俺もそっと長太郎に手を差し出す。
――ぎゅっ
俺の手を握る長太郎。
その手は俺より大きくて温かい。
「一度…こうしてみたかったんです」
「ん…///」
そういえば、俺達はまだ一度も手を繋いだ事なかったっけ…。
「宍戸さんの手…とてもあったかい…」
「…おまえの手も…な///」
歩きながら、繋いだ手はいつしか指が絡まりきつく握りあっていた――…。
end.
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