Jのお題

□ドライバー
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「依頼人が死んだ?
何よそれ! どういう事!?」



「どうやら組織内での
仲間割れに巻き込まれた
みたいですね…
これでこの品を
狙ってくる連中は
倍にはなりましたね」


電話を持ちながら
ひゅっとメスを振り
血をはらう赤屍は
どこか楽しげに
クスッと笑った


「ギャラはどうなるのよ!
まだ前金しか
貰ってないのよ!」


「無事に運べば先で受取人が
現金で払うと言ってます
どうしますか 卑弥呼さん…
このまま運びますか?」


「馬車さんは?」


「オレはどちらでも構わんぜよ
金が貰えるんならな…
ただ頼まれた仕事は
いつでも本気でやる」


「……そう…
じゃあこのまま
依頼は続行するわ
構わないわね ジャッカル」


「ええ…お望みのままに
レディーポイズン」


電話を持つ
赤屍の微笑みは
凍えるように冷たく美しかった



電話の相手の受取人にも
この冷たさが伝わり
戦慄している事だろう


この先は予想以上の敵が
待っているかもしれない



けれど自分達はプロなのだ
例えそれがどんなに困難な
仕事だとしても
本気でやり遂げてみせる



襲いかかる横取り屋の
一人に炎を吹き付け
卑弥呼は毒香水の蓋を閉じた

















「…でなんで
みんなでファミレスなわけ?」


「ここから先はろくに店もない
山道ですから
食事を取れるうちに
とっておかないと
力が出ませんよ
卑弥呼さん」



「こんな時間に食事とか
太るじゃない!」


「コンビニ飯や
ファーストフードよりは
マシでしょう?
ほら しっかりサラダを
食べて」



「オクラ入りなんて
やめてよ−
嫌いなんだから!」



「粘り物は精がつくんですよ
好き嫌い言ってないで
食べなさい
それに少しでも
カロリ−控え目にと
和風サラダにしたのに
わがまま言うんじゃ
ありません
馬車…ついでに
私の分の紅茶を
入れてください」



「自分でやれ自分で」


そう言いながらも
自分の緑茶と赤屍の紅茶を
ドリンクバ−で入れながら
馬車はため息をついた



深夜近くにもかかわらず
ファミレスは大勢の人で
賑わっている


子供連れの家族の隣の
テ−ブルにいる赤屍らは
不思議と周りに
溶け込んでいるようにも見えた


「卑弥呼さん
ご飯を残してはダメです
もったいないでしょう?
いいですか?
お米一粒には七人の神様が
むらがって…」


「むらがって…?!
何 それ!怖いんだけど!」


「怖いならちゃんと
食べなさい」



「そのへんでやめえ
ジャッカル
せっかくの食事が
不味くなるやろ」


マカロニグラタンを
優雅に食べながら
卑弥呼にくどくどと
言い続ける赤屍の前に
紅茶のカップを置き
馬車は席につくなり
地図を広げた


「ル−トを変える事など
あちらはお見通しやろが
この道が人目にもつかんし
早いやろ」


「そうですね…
何…心配はいりませんよ
我々のチ−ムなら…ね
私はこちらのル−トでも
大丈夫かと」


「そうやな…
いや…こっちのほうが
早いかもしれんき」



「地図なんかもう古いわよ−
馬車さん
今時はスマホかナビでしょ
ググればいいわよ」


地図を指さしル−トを検討する
馬車と赤屍に卑弥呼は
ハンバ−グをもぐもぐ
食べながら声をかけた


「電気系統がやられたり
充電が切れた時は
どうするんです
いざという時はアナログです」


紅茶を飲みながら告げる赤屍に
卑弥呼はフォークを向けた


「古いい−!
これだから オヤジは…!」


「生意気言ってないで
早く食べなさい
それにフォークで
人を指すなど
お行儀が悪いですよ
卑弥呼さん」



「ティラミス追加してよ」


「太ると言ってたのは
誰ですか」



呆れながらも赤屍は
ウエイトレスを呼びとめ
追加注文をする



「馬車 貴方は?」



「いや 別にええ
余り食うと胸焼けがするき」


「そうですか?
では私はこのガトーショコラと
ホットココアを…」



聞いているだけで口の中の
蕎麦が甘くなる



赤屍の顔を見て
顔を赤らめながら
レシートを置いていく
ウエイトレスの姿を眺め
馬車はまたため息をついた


これじゃ
家族連れと変わらんじゃないか


俺は確かに運び屋の仕事を
しとるんやろな



まさか運び屋業界の
ビッグスリ−が
深夜のファミレスで
仲良く食事をしてるなどと
敵も考えもつかないだろう



今度は食後のコ−ヒ−を
入れる為立ち上がった馬車に
赤屍と卑弥呼が声をかけた


「馬車
お水を入れてください」


「ごめんなさい
馬車さん
コ−ラ入れてくれる?」



「コ−ラ一本には
角砂糖15個分の糖分が
入ってるんですよ
お水かお茶になさい」


「うるさいわね−!
馬車さんお願い」


「ダメです馬車
お水かお茶を」


「チョコレ−トの塊食う
あんたに言われたくないわ!」


オレの仕事はなんだったか


言い争う赤屍と
卑弥呼の声を背に
グラスとカップを持ったまま
ドリンクバ−で立ちすくみ
馬車はまた深くため息をついた




END







オマケ



カ−ドで支払う赤屍の横で
卑弥呼は入口近くにある
オモチャのコ−ナ−に
ふと目をやった


卑「うわ−懐かしい!
笑い袋だって!」


赤「余計な物は買いませんよ
卑弥呼さん」


卑「だっ誰も欲しいなんて
言ってないでしょっ!」


赤「じゃあ手にしてる
その犬のぬいぐるみを
置きなさい」





オワリW
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