Jのお題

□骸(むくろ)
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あいつは白いサメの刃を
持っている
だけどあんたにはそれは見えない


サメがひとたびかみつけば
波が真っ赤に染まっていく
けれどメッキーはしゃれた手袋を
持っている

だから血のあとは残らないのさ





















「ダメですね
この先は塞がれています
別の道を行くしか
ありませんね」


雨で濡れた帽子を
軽く振り水滴を落とすと
赤屍は助手席に座った


ラジオからは
豪雨の速報と
道路情報が流れその後
軽快なジャズのメロディ
が流れてきた


「【マック・ザ・ナイフ】
ですか…」



「知っとるんか?」


「昔の知り合いに
ジャズ好きな方が
いましてね…
確か三文オペラの
劇中歌がジャズの
スタンダードになった
ものです
殺人者の歌ですよ」


「ほお 」



クスッと笑う赤屍に
馬車はピクリと
眉を上げる



これが銀次なら
もっと楽しい反応が
あっただろうに


そう思いながら
クスクス笑う赤屍の横で
馬車はハンドルの上を
トントンと叩きながら
ため息を吐いた


「さっきのル−トは
電車の脱線事故で
塞がっとったし…
今度は崖くずれか
今日は厄日やき」



「本当に
そう思ってるのですか?
偶然の事故や災害だと」


「いや」


馬車はあっさりと
告げると赤屍にチラリと
視線を送った



ぞろぞろと現れたのは
始末屋か横取り屋か

クスッと赤屍は笑うと
帽子を押さえ
立ち上がった



「少しお待ちくださいね」



ふわりと優雅に赤屍は
トラックから降りる



銃声と悲鳴が響き
そして血と内臓が
飛散する


車内に流れる
音楽のせいか
メスをふるい
人を切り裂く姿が
いつもより楽しげに
見える



逃げまどう男達を追い
まるで踊るように
コマギレにしていく
赤屍の姿を見ながら
思わず鼻唄が出てしまい
馬車は肩をすくめた


歌を聞きながら
今回の依頼人の老人が
赤屍の事を
メッキ−・メッサ−と
呼んでいたのを
ふと思い出す


「殺人者…か…」



ラジオを止め
すっかり覚えた
メロディーを
馬車は口笛で吹き
赤屍が戻るのを待った





END
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