Jのセカイ

□蛍
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「いまなんてった、?」

「依頼人は死にました、と」

「あんたが殺したンだよ」

「まあそういう事になりますか」

「まあじゃないわよ!
どうしてくれんのよ?
報酬が貰えないじゃないの!」


目の前に広がる肉片と
生臭い血の匂いに顔をしかめつつ
卑弥呼は黒衣の男の顔を見上げる


噂以上のイカれた奴

殺しが趣味な殺人鬼

人間離れした美貌と能力を持つ
この男 赤屍蔵人 は
本当にわからない男だ

整った容姿にふさわしい
優しい声と物腰
丁寧な言葉づかい


そんなことが
全て一瞬で消し飛んでしまうほど
この男は残酷で冷たい

初めてこの男と組んだ卑弥呼は
おのれの運の悪さに
げっそりとしていた

せっかく 新しいマンションに
引っ越そうと思ったのに

あの 強欲な
不動産屋はキャンセルなど
しようものなら二度と物件を
紹介してくれないだろう


「私はね 別に構わないのですよ
依頼人が依頼を二股かけようと
同業者と組み罠を
張ろうと
仕事が楽しめるならね.....
けれど こんなつまらない
雑魚相手ばかりでは
さすがの温厚な私もキレますね。
せっかくポイズンマスターの
妹君である レディーポイズンと
仕事ができるというので
楽しみにしていたのに
だいなしですよ」

「温厚て意味分かってる?
あんた 、、、
こんなことばかりしてたら
もう仕事なんか 来ないわよ
ドクタージャッカル」

依頼人も 受取人も仲介人さえ
皆殺しにしたのだ

こんな危なっかしい奴に
仕事なんか来るわけがない

「私がしたことを知っているのは
貴女だけですから 大丈夫ですよ。」


瞳を細め赤屍はクスッと
冷たく笑った。

その笑みを見た卑弥呼は
心底 身体が凍りついた

きっと死神のほうが
数倍優しく見えるのでは
ないだろうか

両手をコートのポケットに入れて
月夜の下微笑む赤屍の美しさが
尚更 恐怖をつのらせた

思わずポーチの毒水香を
卑弥呼は握りしめ身構えた


アレを 赤死香を 使うしかないのか

できれば使いたくないのに


ジンワリと汗が額に滲んだ
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