Jのセカイ

□パートナ−
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雨が一段と増してくる


崖下に落ちた
ひしゃげたトラックは
白い蒸気を上げ
カラカラと車輪を
回転させていた


崖下を覗きこみ
赤屍はため息をついた


「やれやれ…
たかが道路が
吹き飛んだくらいで
ハンドルを取られるとは
情けない…」



落石でひしゃげた
運転席を一瞥し
赤屍は帽子の鍔を下げ
再びため息をついた

馬車以外の運び屋と組むと
これだから 困る

結局最後は自分一人になるのだから




「ここからは
徒歩ですか?
全く…面倒ですねえ」


足元の
奪い屋の肉片を
踏みつけながら
赤屍はそのまま
闇に染まる山の中を
歩き続けた



依頼の品である
マイクロSDは
コ−トの
内ポケットにあるし
問題はない


依頼人はヘリを
寄越すと言っていたが
悪天候の為かなり時間は
かかりそうだ


とりあえず
雨をしのぐ場所をと
赤屍は山中を
歩き続けた



やがて打ち捨てられた
農作業用の小屋が
目に入った


壁は穴だらけだが
屋根がある分
雨宿りくらいは
できるだろう


中に入った赤屍は
荒れ果てた小屋の中に
転がる一斗缶を
足元に置き
散らばる藁や木片を
適当に放り込むと
ライターを取りだし
火をつけた


「馬車のライターを
持ってて正解でしたね」


寝過ごして慌てて
仕事に飛び出した
馬車の枕元に
転がっていた
100円ライターを
何気なくポケットに
しまったのは
三日ほど前だったか




パチパチと音をたて
燃え上がる炎を
しばらくじっと見つめ
赤屍は
木箱を前に置き
座った


暗闇など
何の支障もないが
つい火をおこして
しまうのは人間の
本能だろうか


クスッと笑いながら
散らばる紙屑や
落ち葉を入れると
炎の強さが増した



雨は勢いを緩める事なく
降り続け
木片の弾ける音を
掻き消すほどだった



「久しぶりですね
火をおこすなど…」


黄色と橙の交じった炎が
赤屍の蒼紫の瞳の中で
ゆらゆらと揺れている


木の燃える焦げ臭い匂い
赤く燃え上がる炎


懐かしい


ふと そう思った自分に
赤屍は眉を寄せた
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