航海日誌
□ざまぁみろ
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俺の可愛いマリモちゃんは、執着心が無さ過ぎる。
俺がどんなにレディにメロリンしたって、あいつはケロリとしてやがる。
俺は、ゾロがクソゴムや鼻とじゃれているだけで、嫉妬で狂いそうだし、チョッパーとの昼寝だって本当は止めてほしい。
端から見れば、普段仏頂面のゾロが幼い顔を晒して、小さなチョッパーを抱き締めながら寝ている光景は微笑ましい事この上ないのだが。
…内心俺は、腸が煮えくり返っているのだ。
いつ、トナカイ鍋にしてやろうか。
そんな事を考えたりしている。
それでも俺がチョッパーを蹴り飛ばさない理由は。
チョッパーが仲間だという事と、ゾロが、とても気持ちよさそうに眠るからだ。
(確実に後者の理由の方が大きいが。)
あんなに優しい顔で眠っているから、結局は許してしまう俺がいる。
本当なら、そんな幼くて無防備な顔を人前で晒すくらいだったら昼寝なんてさせたくないのだ。
だが、そんな事を本人に言っても聞かないし、夜に体力が無くなっちまって、損するのは俺だし。
俺は、実はレディたち以上にゾロにはとことん甘いんだ。
掃除や洗濯だって俺がやるし、ゾロが腹減ったって言えば何時でも最高の料理を作るし、ゾロの要望には必ずと言ってもイイ程答えている。
なんか俺…、すっげェ健気。
イイお嫁さんじゃね?
…とまァとっても健気で可愛い俺は、いつもどこでも嫉妬に狂っている。
船内では全てのクルーがゾロの事好きだ。
仲間的な意味合いでの『好き』じゃなく、明らかにゾロの事を『愛してる』クルーだっている。
陸に上がれば、確実にゾロは老若男女問わずに声をかけられる。
酒に釣られてホイホイついていっちまう事もある。
一旦心を許すと、その相手にはとても無防備になるゾロは、俺が居なきゃヤられまくりだろう。
殺意や敵意には人一倍敏い癖に、自分に向けられる好意には滅法疎いんだ。
だからいつも俺ばっかりが嫉妬している。
あの硬派のゾロが俺の言葉に赤面したり、一緒に風呂に入ったりしてくれている事などから、ゾロも少なからず俺の事を想ってくれているのはわかる。
自分で考えててニヤケる。
(ゾロ曰く、『ろくでもない事を考えてる時の顔』だ。)
サンジ「でも、やっぱり、俺ばかりが嫉妬するのは不公平だと思わない!?」
俺は、キッチンのテーブルを力強く叩いて立ち上がった。
ナミ「え、えぇ…、うん…、そうね…」
サンジ「でしょ!?俺このままじゃ、色々煮詰まって、ゾロの事襲っちゃいそうなんだよ!!」
長い長ーい俺の言葉を、ナミさんはコーヒーを啜りながら聞いていた。
途中から力が入りすぎて、自分の世界へ入り込んでいたかもしれない。
俺は、冷めてしまったナミさんと、自分の分のコーヒーを煎れ直して、自分の椅子に座った。
ナミさんは、ありがと、と言ったきり言葉を発さない。
ゾロ語りに熱くなりすぎただろうか。
彼女もゾロの事が好きなのに。
お互いに言葉を発さないまま10分程時間がすぎた。
ナミ「要するに、」
ナミさんに相談したのは失敗だったか、と若干後悔をし始めていた俺は、突然のナミさんの声に、少し驚いた。
ナミ「ゾロに嫉妬させたいってコトね」
サンジ「そーゆー事なんだよ!」
俺は、ナミさんの言うとおり、ゾロに嫉妬してほしいんだ。
ナミ「んー、ゾロ、サンジくんの女の子に対する態度に嫉妬ってしないの?」
ナミさんが可愛らしく首を傾げて、俺を見る。
ナミさん素敵だァ〜〜〜!!vV
サンジ「それが…してないみたいなんだよ全く」
うなだれながら言うと、ナミさんは形のイイ顎に手を添えて、なにやら考えている。
ナミ「ま、しょーがないわね。今回は協力してあげる。…でも、」
ナミさんはそこで一度言葉を切ると、俺のネクタイをグイッと引っ張り、鼻と鼻がくっつきそうなくらい顔を近付けると、静かな、だけどハッキリとした声で、言った。
ナミ「もしゾロを襲って泣かせたりしたら、…許さないんだから。」
サンジ「…そ、そんなナミさんも…、素敵だ〜…」
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