陵南高校物語〔海〕
□陵南高校物語〔海〕その1
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空はどこまでも青く広がっているのに、やたらと風が強く埃っぽい。典型的な春の日だ。
だが目の前に広がる海が、時々潮の香りを運んでくる・・・深く息を吸い込むと、ここが東京から遠く離れた場所であることを改めて実感出来た。
ゆっくり歩いて行くと、次第に陵南高校の正門が見えてきた。周囲はいかにも新入生といった雰囲気を纏った人、人、人の山。
記念撮影をする親子や、顔馴染みで固まって話している学生の間を掻き分けて新入生受け付けに辿り着く。
「御入学おめでとうございます。クラス発表と今日のスケジュールをお渡ししますので、お名前お願いします。」
「仙道彰です。」
「せんどう・あきら君・・・三組ですね。では、こちらは今日の資料です。階段を上って頂くと三組の教室はすぐですよ。」
「どうもありがとうございます・・・?」
教室に移動しようとしたところ、仙道は相手が何か言いたそうな空気を感じた。
「あの、何か?」
不思議に思って尋ねる。
係の女性は自分の不躾な視線を誤魔化す様に、微笑みながら彼に話し掛けてきた。
「ごめんなさいね、ジロジロ見ちゃって。凄く大きいなぁってビックリしちゃったの。」
「あー、はい。よく言われます。」
内心またかと思いつつ、ごめんなさいね、と再度謝る彼女にニッコリ笑いかけ教室へと向かった。