倉庫@


□哀れなサンドリヨンと泣き虫王子様T
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灰色の空の下。

黒山の人だかり。

広場の真ん中には巨大な十字架。

一人の少女が壇上を上がっていく。

人々が少女を罵る。

汚い言葉を投げつけられても、まるで聞こえていないように。

真っ直ぐ前を見て登っていく、ジャンヌ・ダルク。



イギリス宮廷の一室。

豪華絢爛な装飾が施された部屋で向き合う二人。


「何でだよ・・・意味わかんねぇよ・・ッ」


拳を握り締め震わせる。


「・・・仕方なかった」


普段温厚な彼が怒りをあらわにしている姿を見て、アーサーは内心動揺していた。

「そんなの理由になるかよ!!・・・助けに行く」

「おい、待てフランシスッ!間に合う訳無い・・・」


背中を向け、ぴたりと止まる。

ゆっくり振り向き今まで見たこと無いくらいの、鋭い眼光で言い放った。


「お前が、ジャンヌを殺した」


扉が静かに閉まった。





「はっ・・・はぁ・・くそッ、どこだよ!」


慣れない異国の町中を探し続ける。

その時、遠くに煙が棚引くのが微かに見えた。



広場に駆け込む。

人々をかき分けて進む。


「邪魔だ!!てめぇら退け!」


迫力に気負されて、人々が道を開けた。

やっとの思いで広場の中央に辿り着く。


「・・・ジャンヌ・・?」


炎に包まれた少女の姿。


「まだ死ぬなよ・・ッ!約束しただろ・・?戦争が終わったら一緒に暮らすって・・ジャンヌ・・・」


制止しようとする兵士を押しのけ壇上に近づく。




一瞬

炎と煙の間から 見慣れた あどけない 顔


「ジャンヌ」


別れのとき さようなら 確かに君はそう言った




やがてまた煙に包まれる少女。

急に力が抜けて地面に座り込む。

流れ落ちる涙雨。



空は曇っていた。



end
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