倉庫@
□右端の兎
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ザクッ
真っ赤にうれた林檎に包丁を入れる。
中から甘みの濃縮された透明な果汁が溢れ出てきた。
リヒテンシュタインは包丁を器用に使い、4匹のウサギの形に仕立てた。
(こんなものでしょうか・・・あ、そうだ)
4匹並んでいるウサギのうち、一番右端のものに、軽くキスをした。
(これくらいなら・・・・)
皿に戻し、台所を出た。
「兄さま・・・大丈夫ですか」
「けほっ・・・あぁ、すまない。風邪なんぞひくとは・・・我輩も訓練が足りんな」
「・・・働きすぎです、兄さま。今はゆっくり休んでください。・・・どうぞ林檎です」
「あ・・・ありがとう」
(・・・右端のウサギ・・・)
スイスは辛そうに体を起こすと、林檎に手を伸ばした。
そして・・・
右端の林檎を手に取り、一口かじった。
シャリ
(・・・あ・・・)
「・・・・甘いですか?」
「え?あぁ、とても甘いである」
「・・・お皿、洗ってきます」
部屋を出たリヒテンシュタインの頬は真っ赤だった。
まるで林檎のように。