倉庫@


□右端の兎
1ページ/2ページ

   


ザクッ


真っ赤にうれた林檎に包丁を入れる。


中から甘みの濃縮された透明な果汁が溢れ出てきた。


リヒテンシュタインは包丁を器用に使い、4匹のウサギの形に仕立てた。



(こんなものでしょうか・・・あ、そうだ)


4匹並んでいるウサギのうち、一番右端のものに、軽くキスをした。


(これくらいなら・・・・)



皿に戻し、台所を出た。





「兄さま・・・大丈夫ですか」


「けほっ・・・あぁ、すまない。風邪なんぞひくとは・・・我輩も訓練が足りんな」


「・・・働きすぎです、兄さま。今はゆっくり休んでください。・・・どうぞ林檎です」


「あ・・・ありがとう」


(・・・右端のウサギ・・・)



スイスは辛そうに体を起こすと、林檎に手を伸ばした。

そして・・・





右端の林檎を手に取り、一口かじった。




 
   シャリ



(・・・あ・・・)



「・・・・甘いですか?」


「え?あぁ、とても甘いである」


「・・・お皿、洗ってきます」



部屋を出たリヒテンシュタインの頬は真っ赤だった。





まるで林檎のように。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ