倉庫@
□降りしきる雨の中
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雨が降っている。
アメリカはしっとりと濡れた田んぼのあぜ道を歩いていた。
(今日は日本と話し合いか・・・それにしても雨止まないな)
やがて緑の垣根が見えてくる。
白い霧に包まれたかやぶきの小さな家に辿り着いた。
「おーい!!日本いるかい?」
(返事がないな・・・)
「日本!留守か?」
待ちきれないアメリカは、思わず引き戸に手を伸ばした。
ガラ・・
(わッ!日本ではドアに鍵をつけないのか?)
「日本ー!鍵開いていたぞ!って・・本当に誰もいないのか?」
恐る恐る足を踏み入れた。
「じゃあ入っちゃうぞ・・・?」
靴を脱ぎ、土間から畳の部屋に上がる。
(日本の・・・いや菊の香りがする)
ふわりと香る木の匂い。
畳独特の清々しい香り。
「いい匂い・・・じゃなくて!!菊、そこにいるのは分かってるんだぞ!」
やはり返事はなく、外の雨音が廊下に響くだけだった。
「まったく菊は・・・この部屋かい?」
側にあったふすまを開ける。
しかし誰もいなかった。
「どこに行ったんだ?」
アメリカがその部屋を後にしようとした時、一枚の写真が目に入った。
(これは・・・)
その少し色褪せた写真には、恥ずかしそうに微笑む菊といつものように不機嫌そうなイギリスが写っていた。
下に小さく日英同盟記念≠ニ書かれている。
(・・・胸がチクチクするぞ・・嫉妬・・?まさかね・・)
その横にはあどけない顔をした幼い日本と、今よりほんの少し若く見える中国の写真が飾ってあった。
(小さい菊か・・・可愛かったんだろうな・・今も可愛いけど)
アメリカは次々と写真を見ていった。
(まだ俺とは撮ってなかったっけ・・・)
「って!本当に何しているんだ俺!!早く菊を探さなきゃ」
その後もアメリカは家中日本を探し回った。
だが和室や台所、寝室にも日本はいなかった。