log2

□Liars do a light light kiss
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色褪せた玩具箱みたいだと思った。
観覧車も回転木馬もコーヒーカップもある。
それら一つ一つの色素は抜け落ち、安っぽいプラスチックのおもちゃだった。
すう、と風が足元を這う。
前に来たときはこんな風じゃなかった。
何てことだ、ここにはもう享楽≠ネんて無い。
それでも隣にいる男は笑っていた。
楽しいのか、哀しいのか、わからないけれども。

「見ろよフランシス、観覧車だぜ。ほら、メリーゴーランドも。わくわくするなぁ」

笑顔のまま言った。
この嘘吐き。

「どれから乗る?あ、そうだアイスも食わなくちゃ。あの店行ってみよう」

手を引かれる。
店のドアが開き、やる気のない店員から二つアイスクリームを買った。
苺とバニラ。

「お前はバニラな」

ベンチに座る。
受け取ったアイスを舌先で舐めた。
甘い。
泣きたくなるほど甘かった。
バニラアイス。

「フランシス、頬についてる」

アーサーは俺の頬を白い指でなぞる。
すくったクリームを口に含み、少し笑った。

「なぁ、アーサー」
「何だよ」
「俺のこと、好き?」

驚いた目を見開く。
すぐに笑顔で言った。

「お前なんかきらいだ、ばーか」

この男の悪い癖。
自分の思っていることとまるきり反対のことを言う。

「お前は?」
「え?」
「フランシスは俺のこと好き?」

「ああ。愛してる」

嘘だけどな。
奴の顔が満足そうにほころぶ。
こんな嘘でいいのなら、俺は嘘吐きになってやる。


嗚呼、大観覧車が回っている。
ぎしぎしと鉄柱を軋ませて。
アイスクリームを食べ終えたら、きっと俺達はあれに乗るのだろう。
天辺でキスをするのだろう。

嗚呼、ああ、実にくだらない!
恋人ごっこなどしている暇は無いのだ。

寂れた遊園地と寂れた俺達の姿が重なって溶ける。
夕暮れの合図、ラッパの音色を聞きながら俺達はキスをした。


(嘘吐き同士は浅い浅いキスをする)

end
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