log2

□僅かに開閉される唇から漏れるありったけの、
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午後から降り出した雪が道路に薄く積もっていた。
部活終了のチャイムとともに校舎から人が溢れ出てくる。

ロマーノは校門にもたれ、すっかり冷たくなった両手に息を吹きかけた。
ぼんやりと舞い落ちる雪を眺める。
突然、視界が真っ暗になった。

「っ!?」
「だーれだっ」

手を振り解き、振り返るとスペインが立っていた。





「遅くなってしもてごめんな、ロマ。寒かったやろ?」

二人で手を繋いで歩く。

「……別に寒くねーよ」
「ほんまごめん、部活長引いてんよ」

何気ない会話が嬉しかった。
もっとスペインに近づきたくて制服の裾をぎゅっと握った。

「明日から冬休みだな」
「そうやなぁ」
「何か予定とかあんのかよ」
「特にないでー」
「ふーん……」

ロマーノが立ち止まった。
スペインも歩みを止める。

「どしたん?」
「……クリスマス……お前と過ごしたい」

これが今の精一杯の言葉。
露骨過ぎたかと、赤面する。
恥ずかしくてスペインを見ることができず、うつむいた。

ふいに抱き締められる。
いつもの匂い。
ほろ苦い煙草。
食べてたのだろう苺飴。
全ての香りが交錯し、錯落する。

「スペイン、ここ道路の真ん中」
「関係あらへんよ、そんなん」

瞳が近づく。

「きっ、キスっ、してやっても、いいぞ」

目を閉じてその時を待つ。

唇が重なる寸前。
耳元で囁かれた。

「キスはまた今度。ごめんな、ロマーノ」

耳たぶを軽く噛みながら呟く。

「クリスマスも、他の奴と会うんよ。だから、」
「……んだよ」
「え?」
「何だよ……やっぱり俺のことは遊びだったんだな」

思わずスペインを突き飛ばした。
息が荒くなる。
喉が熱い。

泣くな、俺。

「そうなんだろ、遊びなんだろ」

否定してくれ。
頼む、スペイン。

「ごめん」
「謝るなよ……畜生が」

くるりと方向転換する。
走り出した。

早くこの場所から離れたかった。
早くスペインから離れたかった。



早く現実から逃れたかった。


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