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□一億年先の地平まで
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「ネバーランドみたいなもんなんだよ」



安っぽいネオンで飾り立てられたビル群を見上げて彼は云った。


雨が充満していた。
むんとしたアスファルトの匂いが細胞まで染み込む。

「ずっと大人になんかなれやしない」
「そんなこと、」
「そうなんだよ。所詮、皆大きな子どもだろう」

想像してみる。
一億年後も私達はこうして話していられるのだろうか。
大きな魚群がビルに群がる。
鮮やかな珊瑚がアスファルトに根付いて小魚が戯れている。
巨躯を持つ生物が悠々と遊弋する。
そんな世界を想像してみる。

想像できない。


人々は黙って歩いていく。
一瞬だけすれ違うだけの出会いと別れを繰り返して。
誰一人として私達に気付かずに。




「なぁ菊」
「はい」
「俺はお前のことが好きなのか」
「知りませんよ、そんなこと」


どうでもいい。
もう、いい。
全てが巨きなものに動かされ朽ちて果てて滅んで消える。
どうせ、この気持ちでさえ。
コドモダマシなのだろう。

滅んでしまえ。


大人は大きな子どもとはよくいったものだ。
では私達は一体どちらなのだろう。
大人の恋に焦がれる反面、純朴な暖かさも手に入れたい。

「俺はどうやったらお前に好かれる?」


何故立ち止まって考えようとしない。
少し頭をひねれば見えてくる。

何故立ち止まって考えようとしない。


雨に濡れた蛍光灯がちらちらと光って何だか泣きたくなってきた。
水溜りに反射したサーチライトやネオンやその他にも混沌とした色んな光が眼球を焼く。

end
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