□鎖と愛の関係性
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またやってしまった。
あれほど肝に銘じていたのに。
もう逃げられない。
憂鬱をぶら下げて生徒会室の扉をノックする。
「入れ」
部屋には書類が床に落ちていて足の踏み場も無い。
仕方なく何枚かの紙を踏んで進んだ。
会長の側に近づくにつれて恐怖が大きくなる。
菊はアーサーの机の前に立ち尽くした。
「昼休みに誰と話していた?」
目線を決して合わさない様にして菊が答える。
「あの……その、何て言ったらいいのか」
「俺の質問に答えろ」
重なる二人の声。
射るような視線が菊に突き刺さる。
ぽた、と汗が書類に落ちた。
「2-2のイヴァンと会話していました」
「内容は?」
「えっと……図書委員会の予算案について、です」
「本当か?」
一瞬目が合った。
凍てつくような瞳。
かたかたと震える手を後ろに隠して言う。
「はい」
すっとアーサーが菊に寄る。
親指と人差し指で顎を持ち上げる。
「……っ」
「イヴァンから聞いたぞ。俺と別れたいんだってな」
「!」
やはりイヴァンはアーサー側の人間だったのだ。
誰にも言わないと約束した筈なのに。
信用していた分、裏切られた時の落胆は激しい。
「どうやってお仕置きしてやろうか」
そうだ。
恐ろしいのはこれからだ。
イヴァンに対する苛つきは消え失せ、代わりに恐怖が襲ってくる。
本当に怖いのは目の前で微笑む生徒会長だ。
「俺のこと嫌いか?」
「いえっ、決してそんな……」
菊は一歩後ずさりした。
じりじりと歩み寄るアーサー。
遂に菊の背中に壁が当たった。
もう逃げられない。
「菊、お前は誰のものだ?」
言いながら唇を重ねる。
舌先が触れ合う。
「っ、んぅ……」
「俺のものだろう」
一瞬解放された。
息をつく間もなく再びキスされる。
言葉や雰囲気とは裏腹に優しいキスだった。
軽く柔らかく舌を絡ませていく。
「はっ……」
甘い吐息が意識を混濁させる。
菊は頭の片隅で「生徒会長はキスが上手い」という噂を思い出した。
突然、背中に冷たいものを感じた。
薄く目を開けるとアーサーが菊の制服の中に手を入れている。
「ちょっ……、どこ触ってるんですか……っ」
右手で菊の後頭部を支えながら慣れた手つきでベルトを外す。