月
□夏鶯
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ミーンミーン…
「暑い。」
「言わないでください。」
ブーンバタバタ…
夏、この季節というのは何ともナンセンスだ。
世間ではそりゃぁもう夏だ海だと騒いではいるがこんな暑苦しく鬱陶しい季節はない。
蝉は分かっているのか暑さを増長させる声を歌うし、
涼しさを誘うはずである扇風機の音でさえ夏の音だと思えば暑苦しく感じるのは自分だけじゃないと思う。
このご時世この気温でクーラーを使用していない家などここだけだろう。
そんなに暑いならクーラー買えばいいのに…あ、お金ないんだった。
遂に僕の頭も溶けてきたらしい。
イイことがあるとすればそう…
「あ゛あ゛…暑い」
目の前にいるこの人物のはだけた着物姿が見られることぐらいだろう。
「…」
よっぽど暑かったのか先ほどからだらだらとうなだれていた銀さんが遂に黒いインナーの胸元を大きく開き、あくびをしている。
あ…ちょっと涙目に
はだけた着物に涙目…
そんな、僕はいまだに童貞の思春期なわけで…
でもやっぱり所詮オタクの僕にさしたる度胸も器量もないわけで…
果てしない妄想だけが延々と続くことを分かってる。
あぁ…今日も暑い。
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