□私立銀魂学園4
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それが土方の耳に入ったのは突然だった。

普段は鳴ることのない時間に携帯の着信音が鳴りだし、訝しげに見てみれば画面には委員長の文字。

しかし通話ボタンを押しても彼は一向に喋らない。不審に思いそのまま音声を最大音量にして聞いてみればかすかに人の声はするものの誰の声かまでは判断がつかなかった。

そして、盛大な破壊音とともに切れた通話に困惑は深くなりもしや何かあったのかとかけ直しても繋がらない。

校内を探し、校外を探しても近藤の姿を確認することは出来なかった。

冷や汗がこめかみを伝い背筋を悪寒が走った。

しかし、近藤からの着信ののち1時間が過ぎた位だったか、風紀室の電話が鳴り響いた。

近藤からかと急いで受話器を取れば底冷えするような声が発せられた。

この声は生徒会の桂小太郎の声…普段温厚な彼のこのような声はきっと小太郎を慕っている後輩ですら聞いたことがないだろう。

「お前らの大将は生徒会室に居る。」

それだけを伝えた電話はこちらの意思を無視して切られた。

妙な胸騒ぎに急いで生徒会室に行けば、
激しく言い争う声

少々乱暴に鳴りながらもその戸を開ければ今にも近藤に殴りかからん勢いの高杉の姿が目に入った。

それは条件反射であった。

土方は右手で近藤を庇い、高杉の腹を吹っ飛ばすようになぎ払った。

突然の攻撃に大した防御もしていなかった高杉はそのまま大きく弧を描き生徒会室の壁にたたきつけられた。

「おい!!近藤さん!!大丈夫か!?」

そもそも近藤以外見えて居なかった土方は当然のように近藤に声をかけた

近藤からの返事はなく彼は意識を失っていた。

怒りに震え振り向けば壁に寄り掛かった彼はそのまま動かなかった。

一瞬頭が真っ白になり、冷や汗が背を伝った。

その瞬間

ガタン

と大きな音がして、振り向けばそこにはここの主である坂田銀時の姿があった。

彼はこの光景を目に写し大きく眼を見開くと一番初めに高杉へ走り寄った。

「高杉…」

小さくかけられたその声に反応するように高杉の手はピクリと動いた。

それに安心したようにほほ笑んだ銀時にこんな状況だというのに土方の心は何故かツキリと痛んだ。

スルリと頬に銀時の手が添えられると高杉はゆっくりと目を開いた。

一瞬走った最悪の状況にはならなかった事は分かった。

そして、ふと周りの状況が目に入ってきた。

電話をかけてきた桂は冷ややかな目でこちらを睨みつけながら腕を組んで状況をただ見ていたし

坂本はいつもの笑いを収め、ニヤリと嫌な笑みを浮かべ、彼らもただ見ていた。ただ、笑っているにも関わらず、グラサンをかけているにも関わらず、その眼が全くわらっておらず、こちらを睨みつけていることだけは分かった。

そして、

「ねぇ、副委員長さんは何でここに居るの?」

いつもの声で
こちらを振り向きもせず坂田銀時は言葉を発した。

それに静かに桂は「俺が呼んだ」と答える

「晋助がそのゴリラを殺すかもと思ってな」

その言い草に反論を返そうと思い口を開こうとしたが

「そんなことはどうでもいいんじゃ。わしはおんしのほうが心配きに
神楽の容態はどうなんじゃ?」

「日輪と月夜が診てる。妙はまだ見つかってねぇ。新八がやべぇからヅラぁついててやってくんねぇ?」

「あい分かった。」

淡々と交わされる会話に口をはさむ隙などなかった

「坂本、後頼んでいいか?」

「高杉はどうすんじゃ?」

「連れてく。おい、高杉?起きれるか?」

そして

「銀」

「ん?」

「わりぃ、俺が守り切れなかった…」

「ばか、お前のせいじゃねぇよ。いくぞ」

何の戸惑いもなく、自然な流れのように高杉を抱き上げると俺の横を通り過ぎた。

その後ろを桂が通り過ぎる。

淡々と流れるその状況に唖然としていると

坂本がこちらを呼んだ。

「おんしらがなんも知らんのは知っとる。そのゴリラ…基風紀委員長があいつらの駒であることも。じゃきぃその猿連れて早よぉ出ていくんじゃ。迎えによんだんじゃき」

状況を未だ理解できていない自分に発せられた声はやはりどこか馬鹿にしたような冷たい声だった。

土方は強く坂本を睨みつけると、低い声を発した。
「何で、黙って見ていた。」

一番の疑問だった。彼らの様子からして近藤が何か彼らの地雷に触れたらしいことは分かった。でも攻撃していたのは高杉だけで、彼らは加勢するでもなく止めるでもなくただ見ていた。

その質問の答えは淡々としたものだった。

「そりゃぁどっちも危険じゃきぃ、そんゴリラが。そんなことより、さっさとそいつ運んだらどうじゃ?はよぉせんとわしゃぁおんしもなぐりとうなるからなぁ。」

「近藤さんがいったい何したんだ」

近藤の眉間には皺が寄ったまま。こういう顔をするときこの人は大体何かを後悔している
一方的に殴られても彼は抵抗した様子がない。
それが何を意味するのか、そんなことが分からないほど自分は近藤のそばに居なかった訳じゃない。

彼が自らの行いを悔いて、そんな事を簡単にする人じゃない

「その男は…    」

そんな土方に告げられた言葉を彼は正直信じることなんて出来なかった


気付いたら嘘をつくなと大声で叫び生徒会室を飛び出していた。




−さぁ突然ですが物語は動きだしました
   それはとても危険な方向に
     真実を知っているものは

     ここには誰もいない−

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