読み物(No.6)
□16.謎掛け
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「…あんた、ガキじゃないんだから。」
ネズミが人の顔をちらりと見るなり、苦笑する。
「…なんだよ?」
いきなり笑われた事が気に入らず、ぼくは眉を寄せながら、手に持っていた最後の一切れのパンを口に放りこんだ。
お世辞にも柔らかいとは決して言えないそれを噛み砕く。
ネズミは自分の食べ掛けの食事を放置したまま、そんなぼくを見てくすくすと笑う。
「ネズミも食べたら?いらないんなら、ぼくが食べちゃうよ!」
笑われてる理由が判らず、ムッとしながらネズミの食器に手を伸ばす。
ネズミは慌てた様子も見せずに、ぼくから残り少ないスープをガードした。
「食べていいんだな?」
スッと目を細め口角を持ち上げる。
「…?…当たり前だろ?きみのなんだし…」
「そうか。おれのだもんな。」
益々、訳の判らない会話にぼくは首を捻る。
「…ねぇ。ネズ…!」
いい加減謎解きの答えが欲しくて、口を開き掛けたぼくの視界にはネズミの長い睫毛が拡がり‐‐‐
次の瞬間には、頬から唇に掛けて舐めあげられた。
「…ネ、ネズミ?!」
ネズミの舌の感触の残る頬を押さえながら、叫ぶ。
一瞬で身体中の水分が沸騰したかと思った。
「なんだよ。あんたが、食べていいって言ったんじゃないか。」
深い灰色が、煌めくように微笑む。
「ぼ、ぼくを食べていいなんて言ってないっ。」
慌てふためくぼくを見て、ネズミはぼくの頬に綺麗な長い指を絡める。
「…ここに。」
舌の感触が残るそこを撫でられただけで、躰がゾクリと震えた。
「ネズミ…?」
「パン屑ついてたから取ってやったんだよ。」
「…は?」
恐らくぼくはとんでもなく間抜けで真っ赤な顔をしていたと思う。
「何期待してたんだよ。」
「き、期待なんかしてない!」
甘く‐‐‐
意地悪な悪戯に
ぼくの心臓は爆発寸前だった‐‐‐
END
あとがき
拍手用なので、短いです。
無駄にラブラブ?
お互いに振り回してんだか、振り回されてるんだかわかんないそんな感じが好きです(>_<)