読み物(漫才)
□3.指先
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「あっつー!」
屋外に出た途端に強い日差しが皮膚に突き刺さる。
いつの間にか鰯雲があちこちに見られるようになったとはいえ、まだまだ残暑は酷しい。
「あかんわ。珠のようなお肌が、日焼けしてしまう〜」
目の上で、顔を隠すように掌で陰を作れば、隣で同じ様な動作をしていた歩がすっと手を伸ばしてきた。
目の前まで伸ばされた指先に視線を奪われる。
夏を越えて、仄かに小麦色に色を変えたそれは‐‐‐
「誰が珠のような肌だよ。…鼻の頭!」
チョンと触れただけで、おれの鼻先から一気に全身に熱を拡がらせた。
「…っ、な、なんや?」
じわりと汗が滲む。
溢れはじめた行き場のない苦しさを抑えたくて、胸元のシャツをギュッと握り締める。
「…日焼けって、もう疾うに焼け過ぎて剥けてるだろ。珠のようなっていうか、剥きかけの茹で卵じゃないか。」
「茹で卵でも、剥いたらツルツルのぷるんとした白い肌が顔を出すんやから、珠のような肌で合うとるやないか!」
歩との掛け合いの最中でさえも、鼻先を掠め、ゆっくりと離れていく指先に名残を惜しむように、視線が後追いしてしまう。
「…じゃあ、地割れしたアスファルト?」
おれの鼻先に触れた指先は、ゆっくりと曲線を描きながら歩の下唇に辿り着く。
「うわっ!‐‐‐えらいランク落ちたな…」
言いながら、バクンッと大きく心臓が跳ね上がる。
あぁ‐‐‐
‐‐‐あかん…これはほんまにヤバい…
誘うようなその指先から視線が逸らせられん‐‐‐
END
あとがき
無自覚な歩に翻弄されまくりな秋本でした(笑)
なんだろう…秋歩は短く文章が纏まる…?
あっ、纏まってない?
…失礼しました(>_<)