お話
□蒼い花(作成中)
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さらさらと筆が紙の上を滑る。
ふと、気になったのかさっきまで猫と遊んでおられたはずの梵天丸様が隣に座り、筆をじっとみる。
特に注意する必要も無い為黙っているが、視線が痛い。
(…何を書こうとしていたのか忘れてしまった。)
ぽつりと筆先に溜まった墨汁が紙を黒く染める。
「ぷっ、はははっ」
嗚呼、これが"ぐっどたいみんぐ"というやつですか。
「…いきなりどうなされた?」
あまりの間の悪い笑い声に顔をあげると未だ面白そうに笑う梵天丸様の顔。
一瞬、その鼻に筆を突っ込みたくなってしまったのは秘密だ。
「いや、左利きなんだなって思って。」
顔の前で手を振りながら話を続ける。
「それが、どうかなさいましたか?」
「左利きってのは芸術家らしい。」
「はあ…。」
筆を握る自らの手を見てみる。
すると梵天丸様が己とは違う白く綺麗で、とても刀を握る手とは思えないそれをふわりと左手に重ねられた。
少し驚いて顔をあげると、見計らった様に唇を塞がれ驚きは何処へやら、反射的に目を閉じた。
たった一瞬触れたそれはすぐに離れていき、目の前には見慣れた悪戯をたくらむ様な子供らしい笑みを浮かべた表情。
ぽたり、と紙に黒い雫が落ちた。
「なあ、絵、描いてみてくれよ。」
唐突なその言葉、一瞬返事に困ってしまうがすぐに言葉を返す。
「私には絵心は…。」
「ん?俺に逆らう気か」
やはり、いくら子供でもずるいお方だと思う。
命令には逆らえないことを知って、敢えて問うてくる。
はあ、と一つため息をつくと意地の悪い笑みから一転、嬉しそうな、まさしく歳相応の笑みを浮かべる。
「何を描きましょうか。」
「そうだな、ちょっと待っててくれ」
そういい残すとどたどたと庭に出て行かれる。