お話

□愛<恋
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最近、政宗が俺を見ている気がする。(自惚れでなく、)
最初は本当に不思議でならなかったけど、政宗は少し変わり者で、そのせいか気にならなくなった。
だが、いつからだったか、何故だかそれが可愛く見えてきて。
更には相変わらずの政宗からの視線に気恥ずかしくなる始末。
その時、自覚した。
政宗が好きかもしれないと。

だけど政宗は男で俺も男。

女と間違えているわけではない。体格も声も手だって全て男としか言い様がない。
もし、告白したら政宗はどんな表情をするだろう。
嗚呼、きっと傷ついた表情をするんだろうな。
なら、この想いは押さえ付けるべきなのだろうか。
否、思い切って告白するべきなのだろうか。
どちらにせよ、辛い結果が待っていることには変わりない。
だから、凄くズルイ方法だけど。

「ねえ政宗、俺様の事好きなの?」

ごめん、ごめんね政宗。
怖くていえないんだ。
カタ、と塵取を持つ政宗の手が震えた。

「な、に…言ってんだ?お前…」

人にしては遅い初恋から、手を振ろうとした。が、
政宗の返答は予想していたものと違った。
それこそ180度逆。
物心ついた頃から心を読むのが得意だった自分を信用するとすれば、だが。
人の頭とは非常に都合良く出来ていると思う、自分にとって良い方良い方に全てを持っていこうとする。

「…え?本当だったりするの?」

気づけば先を促す言葉。

(ごめん、)

もう一度、心から政宗に謝る。
伝わるはずのない心の中で。

「ちが、う、んな訳、」

しばらく間を置いて視線をさ迷わせながら振り絞る様に小さく聞こえた否定の言葉。
おまけに唇までかみ締めて。
あまりにも必死なその姿。
ドクリ、と胸に針が刺さった様に胸が痛くなった。

(嗚呼、もう心なんて読みたくないな。)

「そ、っか。そうだよね。
違うに決まってるよね?」

初恋最後の希望をかけてそう問いかける。
ズルイ質問しか出来ない自分が改めて嫌いになった。

「え…」

さようなら、俺の初恋。

「…政宗?」

うるうると今にもこぼれ落ちそうなほどのそれに、一瞬躊躇うが拭おうと自然に手をのばす。

――パシンッ

一瞬、何が起こったのかわからなかった。
だが手の痛みと教室の扉を乱暴に開ける政宗に悟る。

「っ政宗!」

一瞬遅れて声をあげるも、聞くはずもなくすぐに姿が見えなくなる。
あとはただ、立ち尽くすしかなかった。
どれだけ傷つけてしまったか、手の痛みが教えてくれた。
追いかける?何処にそんな資格がある。
問い詰めて傷つけて、挙句の果てには泣かせてしまって。

政宗は優しいから俺を傷つけたと思って逃げたんだろう。
嗚呼、本当、言うんじゃなかった。

「はは、…俺様サイテー…。」

ずるずるとその場に座りこむ。

「…何年ぶりだろう、泣くのって。」

未だじんわりと痛む手で目元を覆う。


(この心、どうすれば良いんですか。)

END
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