お話

□恋<愛
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言わずに気づいてもらおうなんて、ズルイって分かっている。
更には気づいて欲しいけど気づいて欲しくない、と言う意味の分からない我が儘同然のものまで。
だけどこればっかりは残念ながらどうすることも出来ない。

俺は幼馴染が好きになった。

男の、幼馴染を。

時折、自分は他人とズレている所がある、と感じることがある。
だから最初も、これは単に自分がズレているから、と気づか無かった程に無意識に、だがしっかりと自分に言い聞かせていた。
でも、

「ねえ政宗、俺様の事好きなの?」

空が真っ赤に燃える頃、日直当番で佐助と共に教室を掃除していると突然言われたその一言。
持っていたゴミの入った塵取を危うく落としそうになった。

その一言で、何かが、蓋が崩れ去った気がしたから。
そして崩れ去った瞬間想いを自覚することになった。

「な、に…言ってんだ?お前…。」

蓋を失いぱんぱんだったものが一気にあふれ出す。
必死に平静を取り繕うが佐助は人の内側を知ることに長けている。

「…え?本当だったりするの?」

「ちが、う、んな訳、」

目を丸くして問い続けられる。
声が、上手く出ない。喉がからからと渇いている。
ごくりと喉を鳴らせば今度は冷や汗をかきはじめる。手の甲がかゆい。蕁麻疹でも出たか。
この時久しぶりに自分のデリケートさを恨んで唇をかみ締めた。

「そ、っか。そうだよね。
違うに決まってるよね?」

「え…」

それは明らかに拒絶の言葉。
そして何処か願う様な視線にドクリ、と胸に針が刺さった様に胸が痛くなった。

(こいつは、友達で居ることを望んでる。)

同時にじわりとさめた何かが全身を駆け巡り最後に体温で暖められたのか熱い物として目に溜まる。

「…政宗?」

心配そうに手を伸ばしてくる。
だがその暖かい手に触れられると自分がどうにかなってしまいそうで。

「っ政宗!」

パシンと音を立てて佐助の手を跳ね除けると塵取を乱暴に置き教室から走り出すとトイレへと一直線に向かった。
個室に篭り声を殺して熱い雫を流す。
佐助が先に帰って居る事を願いながら。


(この想い、どうすれば良いんですか、)

END
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