林檎と薬と監禁事件

□果汁100%林檎ジュースとラムネジュース
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ガタッ

静かな教室の中に音が響く。
音がしたほうを、ほとんどの人間が見る。俺も例外ではない。
杏奈が唐突に立ち上がったのだ。そのまま教室の後ろの扉から出ていこうとする。
「汐見!」
先生が呼ぶが気にもとめず、出ていく。俺は急いで立ち上がり、
「心配なので、追います」
とだけ告げて、杏奈の後を追って教室を出る。先生が何か言ったが無視だ。
俺が教室を出たところで杏奈は、角を曲がった。あそこを曲がったら階段だ。急いで追わないと見失う。
走って、角を曲がる。もう杏奈の姿はない。ただ、上へかけあがる足音がする。
「上か」
そう呟き、俺もかけあがる。ここは四階だ。どこに行くつもりだろう。
五階にあがると、一切、足音が聞こえなくなった。
「杏奈ー?」
そう呼ぶと、
「お、にい、ちゃん…?」
と微かに聞こえてきた。声は更に上から聞こえた。
上は立ち入り禁止の看板がたっている。なんというか、こういうのがたっていると立ち入るのに躊躇ってしまう。
でも、そんなことを言っている場合ではない。
看板を避けて、上にあがる。
一番上まであがると杏奈が体育座りの状態で、うずくまっていた。
「大丈夫か?」
「うん」
「教室、戻れるか?」
「………」
杏奈は答えない。戻りたくないのだろう。俺は杏奈の隣に座る。
「教室にいると、なんでなのかな。気持ち悪くなってきて、その場にいてもたってもいれなくなるの」
「…そっか」
それ以上、何を言ったらいいのかわからない。
「保健室でも行くか?」
「保健室の先生嫌い」
さて、どうしようか。
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