悠久の街相談所

□序章 始まりはどん底の帰り道
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職安所、正式名称を職業安定所。

貴方はこの響きにどんなイメージを持つ?
色々あると思うけど、あんまり良いイメージは無いよね。

実際にはその通り、ここには日夜職を求めて人々が列を成す。
どの人の顔も真剣。
まぁ半分はおばちゃん達の井戸端会議所になってるみたいだけど、かく言う私もその真剣な人達の仲間だったりする。

今日も相談者半分、お喋り半分って所だな。
端から順に見回して、心の中で自己解決した。

そんな部屋の中でしばらく座って待っていると、アームカバー(解るかな?事務の人とかがはめてる肘から手首をおおう手袋みたいなの)をした眼鏡のおじさんが出てきた。

「はい、お待たせしました。えっと…サカシロさん?」

「あの、サカキです」

「あぁサカキさん」

今まで何十回とされてきた間違いを正す。
まぁ「坂城」って書いて「サカキ」って読むなんて普通じゃ読まないから、間違ってもしょうがないんだけどね。
私だって慣れるまで結構時間が掛かったんだから。
それより。

「あの、それでどうでした?面接受けさせてくれる所、ありましたか?」

身を乗り出しておじさんに尋ねた。
必死だなんて言わないで。
こっちはなりふり構ってる余裕なんて一ミリもないの。
今回はこの前の惨敗から大分条件広くしたから、今度こそ大丈夫な筈。

「えっとサカキさん。今回の結果は…」

おじさんは私の必死さなんてお構い無しといった様子でのんびり眼鏡を上げ、書類に目を通す。

…。

うう…長い…。沈黙が長い…。

これはどっちの沈黙?
やっぱりダメ?それともオッケー?

お願いおじさん!良い知らせを口にして!
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