side story
□冥桜の、ひとやかな想いを。
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――天神界・千零國・椿城・庭
春の木漏れ日が降り注ぐ中、白い椅子に座る末羅は淹れたての紅茶をカップに注ぐ。
「…流石、羅淡の側近だけあるな。俺の好みまで把握してストックを置いておくとは…」
『末羅叔父様が大好きな…シナモンたっぷりのアップルパイを焼いたんだ。食べに来て…』と、ほんの数分前に式が飛んできたので彼は足を運んだ。
焼き立てのアップルパイは、とても美味しそうなきつね色をしている。
食べたいのを我慢し、末羅はカップに注いだ紅茶を口にした。
無論、紅茶も末羅が好きな茶葉を準備されていた。
「そういや…アイツ…甘い物大丈夫だったかな?」
はっと、何かを思い出した末羅は首を傾げながら考える。
「ラズベリーパイが食べられるなら平気だよな。アップルパイぐらい…」