『血の旋律シリーズ』快楽ニ溺レ〜
□壊れゆくジグソーパズル
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―天界・千零國・椿城・書斎部屋
細かいピースは、組み立てるのに、時間が掛かる。羅淡の心は、闇にピースを預けた状態。
普段と、変わらない様子なのに、顔が寂しさを増してしまう。
父親の十一年忌すら終われば、この、憂鬱な気分も治るのに。
「羅淡様…」
「ん、立樺か」
「幾ら、待ち焦がれても、月は来ませんよ…」
椅子に、座りながら彼は、窓の外を見ていた。
軈て、昼になる時間、何時もなら、来ても良いハズの人物が現れない。
そんな様子を、見つめる立樺は苦い表情を浮かべた。
「どうか、そんなに、寂しい表情をなさらないで…王よ…」
「…別に寂しいとかない。ただ、何時も、来ていた人物が、来ないと案外、静かなんだ。でも…静か過ぎて暇だ」
「でしたら、夜姫様の所に、赴いたら如何ですか?夜姫様も、羅淡様に、逢いたがっております…」
「それも…一つの暇潰しか」
立樺の科白に、羅淡はすんなりと承諾した。
そして、椅子から立ち上がり彼女を見て。
「留守の間、誰も城には入れるな。たとえ、翼や黒だとしても」
「畏まりました…」
「アイツ等には、苦しいだろうからな」
妖しく微笑し、羅淡は、書斎部屋から出て行く。羅淡の言った『苦しい』とは、城に、漂う空気の事だろう。