『血の旋律シリーズ』龍謌ノ音花〜

□雨の中で、君は囁く…
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―天神界・千零國・椿城・命の湖


ふわりと香る風羅の匂いは、閠濂の鼻孔を擽った。
下界で暮らしていた時は舞を舞う習慣が途絶えていたせいか、今みたいな状況に陥る事もなかった。

雨に濡れた漆黒の髪から雫が滴る。


「舞っていれば、見えてくる世界がある。華やかな世界に見えて…実は狭い。雨が降っている事も気にせず舞えるのはソナタを想っていたから…私の自制心は閠濂そのものだ…なのに…」


「わ、悪かった…」


「反省してる?」


両頬をムギューと引っ張る風羅は首を傾げた。
閠濂は集中を途切れさせた事に対し、深く反省した。つまり、先ほどの接吻は自制心を保てなかった訳ではなく彼がしたかっただけなのだと解った。
風羅自身、理性を保つのは得意分野に等しいかも知れない。
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