†右京×綱紀†

□涙は俺に
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右京さんの涙なんて

見たことなかった

見たくなかった






『涙は俺に』










「右京さん…?」
「ぅん?」





廊下を歩いてきた右京さんを見て
俺は思わず呼びかけてしまう


…また
首に紅い痕があった




「ぁの……」
「あぁ…これ??」
「ぇ…と、はい」
「また締められちゃったの



にっこり笑って
右京さんは言った





笑ってはいるけど…
右京さんの目が
何処か寂しそうに見えた

またって……


そんな笑って
言わないでよ…右京さん


「嫌だよねぇ…痕残ってさぁ」
「何か貼って……」
「いいよぉ、いつもだしさ。慣れちゃった



慣れるはずない


痛いことには


絶対



「僕ちょっと出かけるねぇ、綱紀君
「あ…なんで?」
「んん?…気分転換
「右京さん………」



やっぱり
いつもと違う


あまり俺の方を
見なかった


…近づいても来ない



「どうしたのぉ、綱紀君!なんか元気ないょ?」
「右京さんこそ、ないじゃないですか」
「…やだなぁ、いつもと一緒だょ
「違います」



俺は
思わず強めて言った

ふざけてなんかいない

真っ直ぐ
右京さんを見た



しんみりした空気が流れる

ビックリして
俺の方を向く右京さんは
何も口にしない


笑わずに
ただ俺の方を見ていた




「綱紀君てば…変なの…」
「右京さん…?」


眉が寄せられている
それは
綺麗に…
どこか…悲しそうに


つらそうな
初めて見た一面






「ぃつものことだょ…。痣なんて、当たり前になってるんだ」
「…………」
「だから、気にしないでょ。ね?…そんな顔しないで」



関わらないで



そう聞こえた気がした




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