□傘もささずに。
1ページ/1ページ
頻りに降り続く雨。
厚い雨雲は空を覆いつくして太陽の光を遮る。
「…何やってんだオレ」
雨水が長い赤い髪に滴る。
彼は募る思いを相手に打ち明けたものの通じなかったのだ。
「はぁ…クソ」
溜め息がでる。
すると雨の中を走ってくる一人の男がいた。
「シ、シノン…」
「な、なんだよ」
「俺…あの時はあんたの言葉が理解できてなかった」
頭をかきながらてれる。
「えぁ?意味わかんねえ」
「その…アレだ、つまり…」
喋るたびに顔が赤くなっていく。
「はっきりしろよ…」
「うるさい!俺もシノンが好きだ!」
「…ハハッ」
「なぜ笑う!」
「気づくのおせぇ」
シノンは少しそっぽをむいた。
雨はもう止み、あかるい午後の日差しが彼らを照らした。