FF7

□プレゼント
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「わあっこれ可愛い!」

買い出しの為に街を歩いていると、エアリスがとある露店で立ち止まった。

「ほら、見て見てクラウド!」

エアリスは並んでいる商品をひとつ手に取り、後ろにいる金髪の青年の方に振り向いて声をかけた。
トップが小さなティアドロップの形をしたシルバーのネックレスが、彼女の手の上で日の光を受けてキラキラと光っている。

「…買ってやろうか?」

楽しそうに微笑む彼女を前に、そんなセリフが思わず自然とクラウドの口をつき、そのネックレスをエアリスの手から取る。

「えっいいよ!大丈夫っ」

「…いいのか?」

いつもなら絶対、"わあ!ありがとう"とかなんとか言ってちゃっかり3つ(勿論ティファとユフィの分である)手にとって渡してくるのに。
クラウドはそんな自分の予想と裏腹な態度を取ったエアリスに疑問を抱いた。

「お金もったいないし、ね?
さっ早く買い出し済ませちゃお」

ネックレスを元の場所に戻して歩き出すエアリスに尚も疑問を浮かべつつ、クラウドは後へ続いた。

***

「えーと、これで全部、かな?」

一通り買い物を済ませ、エアリスはメモと買ったものとを確認する。

「ああ、ユフィの書いたコレは無視でいいからな」

クラウドはメモの端にでかでかとある"マテリアたくさん!"という殴り書きを指した。

「うーん、仕方ない、ね」

「じゃあ戻るか」

「あっ待って!」

荷物を抱え直しながら宿への帰路へつこうとしたクラウドをエアリスが慌てた様子で引き止めた。

「何か買い忘れか?」

「買い忘れというか…ね、クラウドほしいもの、ない?」

「ほしいもの?いや…特には…」

突然の質問にクラウドは答えながらも不思議そうな顔をした。

「ほんとに〜?」

エアリスはじいっとクラウドの目を見据えて尚も詰問する。

「ああ、これといって」

「え〜!つまんな〜い」

口を尖らせて小さな子供のように不満の声を上げるエアリス。とても自分より歳上とは思えない仕草である。

「つまんないってあんたな…急に何なんだ…」

「んーちょっと、ね!
あっじゃああそこのカフェ入ろっ
わたし奢るから!」

ね?と楽しそうに笑ってクラウドの手を引いた。

「ちょ、おいっ…」

一体なんなんだ…?
繋いだ小さな白い手を見つめながら、クラウドはこの手の主の不可解な行動に戸惑っていた。




「さ、好きなもの何でも頼んでね!」

そう言われたクラウドだが、やってきたウェイトレスにコーヒーだけ頼むとエアリスはまた不満そうにした。

「何でもって言ったのに…」

頬を膨らませながらエアリスはアイスティーをストローで啜る。
絶対に欲しいはずの物を遠慮したり、欲しいものがないという自分に拗ねたり、奢るから何でも頼めと言ったり…明らかに普段と様子が違うエアリス。
そんな彼女の不可解さに痺れを切らしたクラウドは、コーヒーカップを置くと少しだけ遠慮がちに口を開いた。

「今日は、その…どうしたんだ?」

「え?」

きょとんとした表情でエアリスはクラウドを見上げた。そんな彼女の反応が予想外で、クラウドもきょとんとする。

「ほんとに分からないの?」

信じられないとでも言うような瞳でエアリスは尋ね返す。

「何がだ?」

訳が分からないという様子でクラウドも尋ねる。

「うーん、そっか…まあここのところ大変だったもんね」

一瞬エアリスが悲しそうな瞳をしたように見えたが、「これ飲んだら行こっか」とすぐにいつもの笑顔に変わったので、クラウドはそれ以上追求できずにいた。

***

店を出ると太陽は傾いていて、オレンジ色が街を包んでいた。並んで歩く2人の後ろには長い影が伸びている。

「この時期は夕方でも暑いねぇ」

西日に瞳を細めながら呟いたエアリスに曖昧に返事をしつつ、クラウドは今日の彼女の行動について考えていた。
しかし、答えが出ることはないまま宿に辿り着いてしまった。

「あー!クラウド、またアタシのリクエスト無視したな〜!」

クラウドたちが宿に着くや否や、颯爽と現れて買い物袋をチェックしたユフィは大声で喚いた。
それを適当に受け流しながら、クラウドは部屋へと向かうエアリスの後ろ姿をただ見つめていた。



その夜、宿のロビーにあるソファーでクラウドは新聞を広げていた。
だが、今日のエアリスの不可解な行動の事で頭がいっぱいで、内容など入って来るはずがなかった。
彼女の行動や表情をひとつずつ思い出してみるが、ちっとも心当たりが無い。


"ほんとに分からないの?"


そう言った時のエアリスの悲しげな瞳を思い出し、ため息をつく。
なぜ彼女はあんなにも一生懸命だったのか。別に何か借りがあったわけでもないのに。考えれば考える程訳が分からなくなっていく。




「クラウド」

ふいに呼ばれ、クラウドは現実に引き戻された。
声の方へ振り向こうと首を動かし、視界の端にピンク色が見えたかと思ったその時ーーーー

「っエアリス?!」

クラウドはエアリスに後ろから抱き締められていた。
ふうわりと花の香りがする。
途端に赤面するクラウド。

「…クラウド
お誕生日、おめでとう」


ああ。


彼女の今日の不可解な行動にやっと合点がいった。それと同時に喜びが込み上げてくるのが感じられた。
徐々に硬直状態から解放されたクラウドの頬に、エアリスは口づけをひとつ落とした。

「クラウドすっかり忘れてるんだもん」

笑いながらも頬を膨らませるエアリス。

「…ごめん」

苦笑を浮かべながらそう言うと、クラウドは回されているエアリスの手を取り、甲に口づけを落とした。




「ありがとう」




君が傍にいる、
それが最高のプレゼント。




HAPPY BIRTHDAY
CLOUD!!




end
20160524 加筆修正
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