FF7
□桜
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"さくら さくらの花びらは
綺麗すぎて たまに
胸が苦しくなってしまうけど"
○桜○
「エアリス、桜って知ってる?」
買い出しの途中、ユフィが隣を歩くエアリスに尋ねた。
「サクラ?なぁに?それ」
「あのね!春にピンク色の花が咲く木だよ!
ウータイにはたくさんあるんだ」
ユフィは自慢気に答えた。
「ピンクの花が咲く木!?
すてき!そんな木あるのね!」
初めて聞く花の話にエアリスは興味深々だ。
そんなエアリスの様子がたまらなく嬉しくて、ユフィは誇らしげに続けた。
「桜ってね、他の花と違って、まず花が木の枝いーっぱいに咲いて、散った後に葉っぱが生い茂るんだよ!
花が咲く期間短いんだけど、花弁が散ってる姿もサイコーに綺麗なんだ!桜吹雪ってゆってね…」
「ふふっ」
夢中になって話し続けるユフィを見て、エアリスが楽しそうに笑った。
「…なんだよー」
ユフィは笑われたのが心外だったようで、口をへの字に曲げた。
「だって、ね、ユフィが花について夢中で話すなんて、珍しくて」
エアリスはころころと笑う。
「ばかにしてんのー?」
頬をぷうっと膨らませてユフィは抗議の声をあげる。
「違う違う、すごく楽しそうなんだもの。
嬉しくなっちゃってつい、ね」
ごめんね?とエアリスはユフィの頭を撫でた。
するとすぐに上機嫌にもどったユフィは言葉を続けた。
「桜だけは特別。春のちょっとの間しか見れないけど、見るとすんごく幸せな気分になるんだ」
ユフィはまた楽しそうに笑う。
「いいな。見てみたい、な」
その様子を想像したのか、エアリスは遠くを見つめるようにして呟く。
「見においでよ!この旅が終わったらさ、ウータイに招待するから!」
「ほんと!?うれしい!」
エアリスは歓声をあげた。
「あーでも散ってる姿も一緒に見たいから、強制長期滞在ね!」
ニッとユフィは笑った。
「わかった!わたし、花売り長期休業する」
エアリスもにっこりと笑う。
「じゃぁ約束だよ!」
ユフィは小指をエアリスにずいっと差し出した。
「うん、約束、ね」
エアリスも同じように小指を差し出してユフィのそれに絡めた。
大好きなエアリスを独り占めできた気分になって、ユフィは顔いっぱいで笑った。
─────桜が咲いてる。
今年も変わらず綺麗なピンク色の花弁をつけて。
春の暖かい日差しの中、
ユフィは満開の桜の木を見上げていた。
たったひとりで。
「…何か桜ってエアリスみたいだ」
ユフィは小さな声で呟いた。
「色とか、綺麗なとことか、強いとことかさ…何となくだけどねっ」
そう言うとぺろっと下を出した。
「────なぁエアリス、春になったよ…
桜、咲いたよ…」
ざあっと強い風が吹いた。
桜の花弁が散り散りに舞う。
「これが桜吹雪だよ…」
か細い声で、ユフィは続ける。
「約束、したじゃんか。
一緒に見ようって、ゆったじゃんか…」
ユフィの視界がじわりと滲んでいく。
「また、隣で笑ってよ。
────いつもみたいに綺麗な笑顔でさぁ!」
ユフィはそう叫ぶと急きを切ったように泣き出した。
滲んだ視界の中の桜はより一層美しく見えて、涙の勢いは増していった。
「ずずっ」
ひとしきり泣くとユフィの鼻をすする音が響いた。
「…桜みたい────そっか!」
何かに閃いて、ユフィの表情はぱあっと明るくなる。
「桜は散ってもまた来年同じように咲くんだ」
うん、と頷いてユフィは嬉しそうに言った。
「エアリス、アタシ待ってるよ。ずーっと待ってるよ」
─────いつかエアリスがひょこって現れて、変わらない笑顔で笑うのを。
─────だって、約束だもん。
エアリスがこんな綺麗な花をみすみす見逃すわけないもんね。
ユフィは立ち上がると、桜吹雪の中を駈け抜けた。
いつか…そう、いつか。
ピンクの絨毯、一緒に歩こう
"散っても舞っても
桜吹雪の中を進んで行こう
そしてまた会える日まで"
end
""内歌詞抜粋:レミオロメン「sakura」
→アトガキ