FF7

□depend on you
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足が…重い…
身体がだるい…



────おかしいな、
昨日ちゃんと寝たはずなのに…






○depend on you○





重い身体を引きずって、エアリスは前を行くクラウドとレッド13から離れまいと足を動かしていた。



───もうすぐ街にも着くはずだし、踏ん張らなきゃ。



改めて気を引き締めて足を進めるエアリス。



ふと、前にいるクラウドが足を止めた。



「クラウド?どうかしたの?」
レッド13が不思議そうに尋ねた。


クラウドはそれには答えず、ゆっくりと後ろを振り返る。



「…エアリス」



クラウドの声が低く、重く、響いた。



「なっなーに?」
動揺しつつ、エアリスは笑顔で答える。



そんなエアリスに小さく溜め息をついたクラウドは、彼女の額に手を当てた。



「…やっぱり」



「なにが?」
まだ誤魔化すエアリス。



「なにが?じゃない。熱、あるじゃないか」
クラウドは溜め息をまたひとつ。



「ええっそうなの!?エアリス、大丈夫!?」
レッド13は心配そうにエアリスを見あげる。


「ぜーんぜん平気!あと少しで街に着くし、早くいこ!ね?」

「待て、エアリス」
クラウドは歩みを進めようとするエアリスの肩をむんずと掴んだ。


「レッド、悪いが急いで街に行ってティファたちと落ち合ったら、すぐに宿をとっておいてくれないか?」

「クラウド!大丈夫だっていってるでしょ?」
エアリスが必死で抗議するが、

「分かった!」
「頼む」


ふたりしてエアリスをスルー。



「無理しないでゆっくり来てねー!」
と、ふたりを残して走り出すと
レッド13はみるみるうちに小さくなっていく。






「───クラウドの…ばか」
エアリスが膨れっ面で呟いた。

「あのなぁ」
呆れながら答えるクラウド。

「大丈夫だってゆったじゃない…」
尚も不満げに続ける。

「大丈夫じゃないだろ、その熱」

「大丈夫なの!」
エアリスはキッとクラウドを睨んだが。


「────なら走ってレッドを追いかけるか?」
まったく怖くないその睨みを一蹴してクラウドはそう言ってのけた。

「う……」
バツが悪そうに黙るエアリス。

「まったく…歩くのだって辛いんだろ?」



確かに、エアリスの身体はすでに限界で、気を張っていないとすぐにでもよろけてしまうくらいだった。





「…ほら」

そう言うとクラウドはエアリスの手を取り、自分の腕にからませた。

「行くぞ」
ゆっくりと歩き出す。






─────敵わないなあ。
エアリスはクラウドの腕にしがみつきながら苦笑した。






「…でも、うまく隠してたつもり、だったんだけどな」
エアリスは悔しそうに言葉をこぼした。


現にレッド13は気付いていなかった。でも…。



「あんたの変化くらい気付く」


────いつも目で追ってしまうんだから。
その言葉をクラウドは飲み込んだ。

今回だって、具合が悪そうなエアリスに早々に気が付いていたが、いつ言ってくれるのかと待っていたのだ。
しかし、意地っ張りな彼女が自分から言うはずがなかった。




「ごめん、ね。迷惑かけて」
しゅんと項垂れてエアリスが呟いた。


「迷惑だなんて、思ってない」
立ち止まってクラウドはエアリスに向き直った。


「あんたはいつもそうだ。
みんなに心配かけまいと無理して、そのくせみんなの心配ばっかりする」



そしてクラウドは真っ直ぐにエアリスを見つめた。



「もっと頼って…甘えて良いんだ」



「え…」
クラウドらしからぬその言葉に、エアリスは驚いた。


「それとも俺たちは…俺は、そんなに頼りないか?」
切なげな瞳でクラウドは訴えかける。



クラウドの言葉と、その蒼い瞳にエアリスの胸はきゅうっと締め付けられた。



「そんなこと、ない」
声を絞り出してエアリスは首を振った。


その言葉に安心したのか、クラウドは微かに微笑んだ。




「───だったら…もっとあてにしてくれ」
それだけ言うとクラウドはまたゆっくりと歩き出す。






────やっぱり、敵わないなあ。



クラウドの横顔を見上げて、エアリスは満面の笑みを浮かべた。





「ね、クラウド甘えても良いって、ほんと?」
クラウドに掴まりながらエアリスは尋ねる。
「ああ」
クラウドは元の澄ました顔で答えた。
「じゃあねぇ〜〜」
エアリスはちらっとクラウドを見やった。





「抱っこ」





クラウドはピタッと足を止めた。




────これで形勢逆転、だね。
クラウドが照れて赤くなる様子を想像してエアリスは心の中で微笑んだ。






のも束の間、






ふわりとエアリスの身体が浮いた。





「えっ…」




エアリスの今いる状態は、いわゆるお姫さま抱っこ。



「まぁ、歩けないあんたには丁度良いかもな」
そう言うとクラウドは平然と歩き出す。



「くっクラウド?」
予想外の展開に着いていけない様子のエアリス。

そんなエアリスにクラウドは、
「甘えたいんじゃなかったのか?」
とニヒルな笑いを浮かべて言い放った。







「………甘えたい」
観念したようで、エアリスは照れ臭そうに、でも嬉しそうに呟いた。




クラウドは今度は満足そうな微笑みを浮かべた。






─────今日は何を言っても勝てないみたい。



エアリスはクラウドの逞しい胸に身体を預けた。


クラウドの心音が、耳に心地よく響く。











「エアリス?」



しばらく歩いた辺りで、静かになったエアリスが気になって、クラウドは声をかけてみる。


すると、当のエアリスはクラウドの腕の中で寝息をたてていた。
熱が上がったのか少しだけ苦しそうに。




─────急がなきゃな。

そう思って足を速めたが、
ふと立ち止まった。






そして、エアリスの額に口づけをひとつ落とした。


end
→アトガキ

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