FF7

□sing for you
1ページ/1ページ


「……ド!
…ラウド!!
……クラウド!!」
耳の傍でした大きな声に、クラウドは重い瞼を押し上げた。部屋はまだ薄明るい。そこから判断するに明け方だろう。こんな時間に一体誰だといわんばかりのしかめっ面で声のした方向に顔を向ける。―――そして溜息。
「何よ、それ。しかもそのなんだと言わんばかりの顔!」
信じられないとクラウドに負けじと溜息を吐いたのはティファだ。腰に手を当て、ベッドを見降ろしている。
「ま、いいわ。早く起きて」
未だ状況が飲み込めず、眉間にしわを寄せたままのクラウドに対し、鮮やかに表情を切り替えると、ティファはそう促し部屋から出て行った。
「一体何なんだ…?」
時刻を見ると午前6時少し前。昨日のミーティングでは9時にロビー集合だったはず、とクラウドは考えたが、激しい頭痛に顔をしかめた。そう、確か昨日は眠れなくて酒をあおったのだ。だがなぜ眠れなかったのかが思い出せない。
とにかく、ティファの後に続こうとベッドを降り、扉を開けた。
「クラウドおっそーい!」
廊下の明かりの眩しさに目を細めた後に改めて周りを見渡すと、目の前には仲間たち全員の姿。正確にはクラウドの部屋の隣の部屋のドアの前に。
その部屋の扉の主は――――。
そこでクラウドの頭の中でバラバラだったパズルのピースがぴたりとはまった。
そう、今日のことを考えあぐねて眠れなかったのだ。あらかじめこっそり買っておいたプレゼントをいつ渡そうかと。
彼女――――エアリスの誕生日プレゼントを。
「…状況は呑みこめたが、何でこんな時間なんだ?」
ようやくすっきりとした顔つきに戻ったクラウドだが、今度は訝しげな顔でティファに尋ねた。
「この間ね、本で読んだんだけど、どっかの国では誰かの誕生日には朝、家族や仲良い友達が集まって、寝てるその人の横で皆でバースデイソングを歌うんですって!素敵じゃない?きっとエアリス喜ぶと思って!」
「なかなかイキな発想だよな!」
瞳をキラキラさせて語るティファに相槌を打ったのはシドだ。彼の性格からしてこういったイベントは喜んで参加するようだ。
「エアリスどんな顔するだろうな〜」
ティファの隣でユフィが待ちきれないと言わんばかりにはしゃいでいる。
確かに、とクラウドは考えた。
朝起きたら隣で仲間たちが自分の誕生日を祝ってくれている…彼女が喜ばないわけがない。
「クラウド、参加してくれるよね?」
黙っているクラウドの顔を覗き込みながら、ティファが少し心配そうな面持ちでクラウドに尋ねた。



「…もちろん」



想像する。彼女の表情を。
一体どんな笑顔を見せてくれるだろうか。

***

音を立てないようにドアを開け、そろりそろりと全員が部屋に入る。
シド、バレットそしてヴィンセントは女性の部屋に入ることが憚られるのか動きがぎこちない。
ユフィの手にはすでに火の灯ったロウソクの載ったティファお手製のケーキ。
ナナキは緊張しているのかしっぽがぴんと立っている。
ベッドの横に全員が並ぶ。主役の彼女はすやすやと気持ちよさそうに眠っている。
ティファが彼女の傍に行き、未だ夢の中にいる彼女の方を叩き名前を呼ぶ。
少し身じろぎをした後に、彼女の瞼が薄く開いた瞬間――――。

Happy birthday to you, happy birthday to you
Happy birthday dear Aerith
Happy birthday to you!!!!


目の前にはいつにも増して極彩色の笑顔。
クラウドは眩しくて瞳を細めた。

2012.2.11 mai
Happy birthday Aerith!!
You are such a wonderful girl!!

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]