FF7
□ナナキ、思ふ。
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いつも優しく微笑みかけてくれるエアリス。
強くてクールなクラウド。
オイラはそんなふたりが大好きなんだけど───…。
○ナナキ、思ふ。○
「レッド、疲れてない?」
次の目的地に向かう途中、エアリスが綺麗な翡翠色の瞳でオイラを覗き込んだ。
急に尋ねられたので「?」を顔に浮かべてオイラはエアリスを見上げた。
「この辺、結構暑いから辛くないかなって思って」
──でも、大丈夫そうだねとエアリスは微笑んだ。
「うん!全然平気だよ」
そう答えたオイラの鼻を優しく撫でて「良かった」とエアリスは言う。
エアリスは優しい。
最近よく一緒のパーティになるけど、いつもオイラのことを気にかけてくれる。鼻を優しく撫でられるのも、子供扱いされてるみたいだけど、エアリスになら悪い気しないんだ。
そう、エアリスは皆に優しい。
だけど────…
「クラウド、怪我してる」
「ああ、ほんとだ」
「ほんとだ、じゃないでしょ。
戦闘の度に無茶して!ケアル、かけるね」
「いいよこれくらい」
「だーめ!はいっ腕出して」
そんなやりとりの後、エアリスはクラウドにケアルをかけてあげた。
「はい、できた!」
「すまないな」
「いーえ」
にっこりとエアリスは笑った。
エアリスは優しい。
オイラにも、みんなにも…
だけど、クラウドを見る瞳はオイラたちに対してのものとはちょっと違うように見えて。
そしてそれはクラウドも同じで。
「エアリス、キツいんなら言え」
「きつくなんてないよ」
「また無理して…さっきのモンスターは少し手強かったからな。この辺で休もう」
「大丈夫なのに…」
不満そうにぼやくエアリスにクラウドは苦笑した。
でもその瞳はすごく優しい色をしていて、それに気付いているのかエアリスも嬉しそうだ。
クラウドはいつもクールで、「興味ないね」が口癖だけど、エアリスといる時は何だかすごく穏やかなんだ。
この間だって、エアリスが具合悪いのにすぐ気が付いて(ちょっと悔しかった…)、エアリスを抱っこしながら遅れて街に現れたクラウドはすごく優しい顔をしてた。
"通じ合ってる"
ふたりはそんな印象。
エアリスだってクラウドだって大好きなオイラだけど、
「ふふっクラウド、自慢のチョコボ頭に葉っぱ、ついてる」
「チョコボって言うな
…笑うな」
「あははっ!だって、何か可愛い」
「そういうあんたも髪についてるぞ」
「えっうそ!やだ」
何か…おもしろくないかも。
なんだろう、このモヤモヤ。
「あんたのも充分笑えるぞ」
「もー!」
…微笑み合うふたりに対してすごく複雑な感情が芽生える。
─────ああ、そうか。
エアリスはオイラにすごく優しいけど、クラウドを見つめるあの瞳はオイラには向けられないんだ。
それが、何だか寂しくて、羨ましいんだ。
大好きなエアリスの「特別」はクラウドだけに向けられてる。
そして同じようにクラウドの「特別」もエアリスにだけ。
いわゆるオイラは"カヤノソト"
でも─────
クラウドの隣で笑うエアリスはいつもよりとっても綺麗。
クラウドもいつものクールなクラウドよりも全然カッコ良い。
そんなエアリスもクラウドも大好きかもって、オイラは思った。
「ねぇエアリス、オイラのこと好き?」
エアリスの耳元でこっそり聞いてみた。
「もちろん!好き、だよ」
花のような笑顔でエアリスは答えてくれた。
「えへへ。でも、クラウドには違う"好き"なんだよね?」
「────っ!レッドったら」
もう!っとオイラの鼻をエアリスはつついた。
そんな風にちょっと照れ臭そうに笑ったエアリスもすごく綺麗で。
やっぱりこのエアリスも大好きだなって思った。
「ねぇ、ふたりとも
オイラちょっと散歩してくるね!」
そう言い捨てるとオイラはその場を足早に離れた。
「おい、レッド!
────一体どうしたんだ?」
「うーん…気、遣ってくれたのかも」
「は?」
ふたりっきりにしてあげちゃった。
じっちゃん、オイラちょっとは大人になれたかな?
オイラの脳裏にふとさっきのふたりの様子が蘇った。
いいな、いいな。
オイラもいつか「特別」、見つけられるかな。
あんな風な笑顔を誰かから向けられる日が来るかな。
楽しみだな────。
end
→アトガキ