FF7

□星色ジャーニー
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森の中に佇む少女が1人。
淡いピンクのワンピースを身にまとったその少女は一心に木漏れ日を浴びていた。
瞳を閉じ、上を見上げてただ静かに。
木の葉の隙間からキラキラと差し込む光は優しく少女を照らしていた。

「…ここもすごく素敵」

満足そうに呟いたその少女―――エアリスは小さく微笑むと、前に向き直り歩みを進めた。

仲間から1人離れて旅立った彼女はただひらすらに北を目指していた。
受け入れた自分の使命を全うする為、そして自分自身の未来を切り開く為に。

"...In the spring, like
smiling at the moon...♪"

「―――何だっけ、この歌…」

自然と口をついて出た歌にエアリスは首を捻る。しかしそれは確かに自分が好きだった歌のように思えた。
気分が良くなったエアリスはその歌を口ずさみながら歩いた。

"...In the summer,
like being love with
fireworks,♪"

「―――わあ、すごい!」

森を抜けて少し行くと、眼前には広大な草原が広がっていた。
視界いっぱいのグリーン。それを嬉々として見つめたエアリスはイタズラに笑んだ。

「…ちょっと寄り道、良いよね?」

そう独りごちたエアリスは手早くブーツを脱ぐと、裸足になり駆け出した。

"...In the autumn, like
breathing in the sky,♪"

両手を羽根のように広げ、先程の歌を口ずさみながら軽やかにその草原を駆け抜ける。頬に当たる風、鼻腔をくすぐる青い匂い、そして足で直に触れる草の感触…その全てが心地よい。
大地が生き生きしている。土も、草も、空気も―――なんて素敵なんだろう。エアリスはみるみる笑顔になった。
草原を抜けた先には小さな入江があった。それを見付けるや否やエアリスは今度はそこまで駆けて行った。

辿り着いた砂浜で白い砂を手で掬えば、さらさらと指の間から零れて風に流れていく。その感触をしばらく楽しむと、今度はワンピースの裾をたくし上げて海に足をつけた。

「気持ち良い〜!あっお魚さんも気持ち良さそう!」

潮風を受けて揺れる髪を押さえながら、エアリスは波の上を爪先で歩き始めた。

「ここもすごく元気、ね!」

そう言って嬉しそうに笑うと、エアリスは入江を離れ、裸足のまま目的地の方角へ足を向けた。

"...In the winter, like
running through to the end of the world ...♪"

太陽が沈み始めると、辺りは段々と闇に包まれていく。
しかしそれでもエアリスは真っ直ぐ前を向き、歩く速度を緩めない。
そうして進むうちに、小高い丘に辿り着いた。それを登りきると、眼下に街が見えた。ぽつぽつと明かりが灯り、街全体がキラキラと輝いている。

「きれい…星空を見下ろしてるみたい」

その景色をエアリスはうっとりと眺めた。
あの森も、あの草原も、あの空も、あの海も、そしてこの街も、全て自分たちの世界。みんなで守ると決めた世界。

「さて、行きますか!」

"寄り道"はおしまい。
まずは目の前の自分に出来ることをしなくてはならないのだ。
決して不安が無いわけではない。でも、今日確かめた沢山のこの星の欠片たちが背中を押してくれる。

ブーツを履くと、エアリスは前へと踏み出した。
目指すは北。


"In the spring, like
smiling at the moon,
In the summer, like being love with fireworks,
In the autumn, like
breathing in the sky,
In the winter, like
running through to the end of the world ..."


「…続き、何だっけ?」

歌詞の続きが思い出せず、エアリスはうーんと唸った。

「…いいや、勝手に作っちゃお!」

"...I've falled in love
with this world♪"

「―――うん!我ながら良いかも!!」

こんなにも素敵な世界――
必ず、守るよ。


一歩々々、彼女は進んでいく。
その顔に微笑みを称え、いつかどこかで憶えた歌を口ずさみながら――。


(春は月に笑うように
夏は花火に恋をするように
秋は空を吸い込むように
冬は何処までも駆け抜けるように...)


僕はこの世界(ほし)に恋をした。


20110102 mai
()内歌詞抜粋
レミオロメン"春夏秋冬"
→アトガキ
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